2022年09月27日

ニコル・クーリッジ・ルーマニエール編『マンガ!大英博物館マンガ展図録』

日本のマンガが大英博物館で企画展示された
図録の表紙はゴールデンカムイのアシリパさん

イギリス・ロンドンの大英博物館で、2019年5月23日(木)〜8月26日(月)、マンガ展「The Citi exhibition Manga」が開催された。図書館で大きくて分厚い図録に触れなければ、知らないままになるところでした。
文化庁の「メディア芸術カレントコンテンツ」にユー・スギョン(京都精華大学マンガ学部講師)の見学レポートが掲載されている。それによれば、3ヶ月間の来場者数は18万人に達し、同館の企画展としては歴代最多来場者を記録した。しかも入場者の約20%が16歳以下で、年齢層の高い来館者が多い大英博物館にとっては画期的な意味をもつ催しとなった。

御大・ちばてつやのインタビューにはじまり、マンガのほぼ全てのジャンルに目配りした図録です。タメ息がでるほど充実している。
印象に残ったこといくつか。
1、全体の表紙が「ゴールデンカムイ」のアシリパさん
大英博物館で初めて企画されたマンガ展ということになれば、図録の表紙は手塚治虫か北斎、または鳥獣人物戯画あたりになりそうな気がする。なんとキッとした表情で遠くを見る「ゴールデンカムイ」のアシリパさんが表紙になっている。アイヌ工芸作家・貝沢徹が、企画展でゴールデンカムイの原画が展示されることを喜び「海外の人たちにアイヌ民族への理解を広げてくれる機会」と語っている。表紙のセレクトに、編者や博物館学芸員の現代マンガを観る目を感じます。
2、こうの史代の『漫符図譜(まんぷずふ)』が楽しい
マンガで多用される符号を漫符という。ビックリした時、ピンときた時、視線がぶつかった時、眠くなった時などの符号は、小さな時からマンガを見ていれば教えられなくとも自然に覚える。しかし、マンガを読むのが苦手な人、大人になって初めて見る人には伝わらない。そこでこうの史代が4コマ漫画で漫符を解説したのが『ギガタウン漫符図譜』です。インタビューも含めれば22ページがこうの史代のページ。アニメ『この世界の片隅に』が大ヒットしたことでメジャーになったが、それまでのこうのは有名作家とはいえなかった。名作『夕凪の街桜の国』(2004年)が描く復興途上の広島に刻まれた深い傷と抒情に、編者たちが特段の価値を見出せばこその人選に思える。
3,初めて読む名作短編2編+1
萩尾望都『柳の木』(「ここではない☆どこか」より。20ページ)と、諸星大二郎『商社の赤い花』(「夢見る機械」より。22ページ)という名作短編2編がまるまる収められている。両方とも初めて読みました。ほかに、東村アキコ『かくかくしかじか』のいちばんいいところ8ページ分も収録されている。三作品とも、言葉だけで伝えることは不可能な情景、抒情、心象があざやかに表現されている。みごとなセレクトというしかない。
4,ヤマザキマリが次に描きたい作品
ヤマザキマリの『オリンピア・キュクロス』の一部12ページ分が収録され、4ページのインタビューが載っている。このなかでヤマザキは、これから描きたい作品はと問われて、沖縄の元部町で戦時中に約50人の中学生が野戦病院に薬を運んでいるところを爆撃されて死んだという事件を描きたいといっている。そんな事件があったのか。いまのところまだ作品化されていないようだが、ぜひ読みたい。

マンガは世界で通用する芸術ジャンル

図録はB5版350ページの大冊。表紙裏の、鳥獣人物戯画のウサギと不思議の国のアリスのウサギが混じったようなイラストも、いい味だしてる(こうの史代『ギガタウン漫符図譜』のキャラクター「みみちゃん」)。編者のニコル・クーリッジ・ルーマニエールや学芸員諸氏の論考は本格的で、マンガ好きとはいえ現役マンガ読者とはいえない身には、もてあますほどの質と量です。彼らの本気度が、まぶしい。
内田樹は、敗戦後の貧しい日本では、才能ある若者たちにとってマンガが映画に匹敵する表現方法だったのだと語っている(『街場のマンガ論』)。カネもカメラもフィルムもない、あるのはペンと紙だけ。解禁されたアメリカ映画にうちのめされるほど感動しなから、10代の若者たちがマンガにうちこんでいく。いま、それがひとつの芸術ジャンルとして世界に通用しつつある。うれしい限りです。

大英博物館マンガ展図録・表紙のアシリパさんに、乾杯。
マンガ! 大英博物館マンガ展図録 - ニコル・クーリッジ・ルーマニエール, 松葉 涼子, 山川 早霧, 飯原 裕美
ニコル・クーリッジ・ルーマニエール編『マンガ!大英博物館マンガ展図録』三省堂、2020年、3500円+税。
2022年08月26日、トキワ荘マンガミュージアムを見学(1)https://boketen.seesaa.net/article/491012593.html
2014年12月10日、辰巳ヨシヒロ『劇画暮らし』映画『TATUMI』https://boketen.seesaa.net/article/410397052.html
2014年09月05日、水木・手塚・藤子・石ノ森『平和をわれらに』https://boketen.seesaa.net/article/404893514.html
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2022年09月25日

調布で「嵐を呼ぶ少女」の講演を聞く

菱山南帆子さんが、嵐を引きつれて調布に参上。
岸田に「国民投票したら負ける」と思わせよう!

台風14号の余波で強風・大雨に見舞われた9月18日(日)の調布。調布憲法ひろばの9月例会は「参院選の結果と憲法問題」と題した菱山南帆子さん(「戦争させない・9条壊すな総がかり行動」実行委員会)の講演です。
菱山さんは『嵐を呼ぶ少女とよばれて―市民運動という生きかた』(2017年、はるか書房)という本を書いています。その名に違わず、ほんとに嵐を引き連れてやってきたのには感心してしまいました。
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33歳の市民運動家の、歯切れのいい、たたみかけるようなお話しに聞きほれました。
小学生のころから差別や理不尽なことが許せない性格で、中学1年のときにはイラク戦争に抗議してアメリカ大使館前に座り込んだ。ふりまわされる親はわたしを「嵐を呼ぶ少女」と呼んだ。意外と気に入っている。今日もごらんのとおり大雨をつれてきた。7日前まで韓国に行ってたが、そこでも大雨に見舞われた。ニュースでご覧になったように半地下の住居で溺れて人が死んだ。亡くなった4人の1人が労働運動の活動家だった。「不平等が災害だ」というスローガンを掲げて集会が開かれている…。
すこし早口の、疾走感あふれる話しぶり。聴衆も、すこしづつ慣れて、途中からは大きな笑い声もおきるようになりました。このひとが、高田健さんからバトンを受けて「許すな憲法改悪市民連絡会」事務局長に就任した。一気に40数歳も若返らせた人事に拍手。

麻生が「市民と野党の共闘が崩れたから勝てた」と言っている
参院選の結果にはみなさんがっかりしていると思います。実際に、改憲勢力が衆参とも改憲のための3分の2議席を握ったのですから、容易ならざる事態であることははっきりしています。
しかしよく見ると、自民党は比例区で票を減らしています。立憲民主党は比例区の票は維持している。なぜ負けたか。小選挙区で野党共闘を実現できなかったからです。衆院選(2021年)の結果を受けて「共産党と一緒にやるから負けたんだ」という、反共カルトにつながっている者たちのキャンペーンが吹き荒れた。立憲はまんまとそのデマに踊らされた。与野党が伯仲していて、ほんらいなら勝てる山梨と新潟で負けたのが痛かった。新潟では森ゆうこ選対が「共産党と市民連合は出禁(出入り禁止)」にした。それは負ける。
麻生太郎が「市民と野党の共闘がくずれたおかげで勝てた」と語った。この人は2017年に「国難突破解散」なるわけのわからない解散を自民党がしかけた時にも「北朝鮮のおかげで勝った」と言った。どこかのお坊ちゃんなのでしょうが、ほんとに正直な人です。
もういちど、市民と野党の共闘をつくりあげるしか、勝つ方法はありません。つくれば勝てる。

小手先政治家・岸田の「国葬で民心をつかむ」作戦は完全に失敗した
岸田首相は安倍元首相が銃撃されてテレビ全部が「安倍追悼」のニュースに染まったのを見て「国葬」を閣議決定した。これで民心がつかめると思った。ところが「国葬反対」の声がわきおこり、8月31日に私たちが国会前で行った国葬反対4000人デモの映像が連日流れた。事件から2ヵ月たっても、国葬反対の声が消えない。それどころか大きくなっている。これで国民の目がそらせる、政権の延命に役立つという岸田首相の姑息な計算が、完全に裏目に出ている。
岸田首相って、言語明快意味不明、ほんとにこずるい、小手先感だけの政治家だと思いませんか。宏池会が出自だといいますが、宏池会の代表・古賀誠を追い出したのが岸田です。古賀は『日本国憲法は世界の宝』(2019年)という本を書いた自民党内のハト派です。タカ派とハト派で政権をたらい回しすることで自民党の長期政権が成立してきた。ところが安倍1強が続いて、ハト派では芽がでないと踏んで古賀を追い落として会長になり、「Hanada」「Will」などの極右雑誌にでまくって媚びを売った。広島出身を売り物にしているが、渋谷生まれの永田町小学校出身、広島とはなんの関係もない。たまたま父が広島選出の議員だからその地盤を継いただけ。8・6ヒロシマ、8・9ナガサキでの首相挨拶が、地名を入れ替えただけで全文同じというところに、ヒロシマへの想いなんかなにもないことがうかがわれる。

「国民投票に備える」ではなく、「国民投票にもちこませない」作戦を
岸田は改憲4項目を引き継ぐと明言し、異例の頻度で憲法審査会を開催している。もはや国会での改憲発議は止められないから「国民投票に備えよう」という人もいる。それはダメです。いまのまま国民投票にもちこまれたら必ず負けます。
第1にCM。視聴率の高いテレビCMの枠はすべて電通が抑えています。電通が流していいと思ったCMしか流れない。カネを集めて改憲反対のCMを流そうというのは焼け石に水。勝ち目がない。
第2に戸別訪問。公選法は個別訪問不可。国民投票法では個別訪問可。維新が参院選と国民投票を同じ時期にやろうとか言っている。改憲反対派が戸別訪問すれば「国民投票に名を借りた選挙違反」として摘発し、改憲賛成派が個別訪問で投票依頼しても「国民投票のための訪問」として見逃す。そういうことが行われるだろう。さらに、戸別訪問禁止に法令を変えるかもしれない。
第3に最低投票率の規定がない。改正する条文を全文読んで判断するなんてめんどくさい、棄権しようと思う人も多いだろう。低い投票率ほど、改憲派に有利に働く。
しかし、これほど改憲派に有利な国民投票でも、政府は慎重に構える。もし改憲案が否決されたら、革命に等しいほどの衝撃になるからだ。
だから、わたしたちがやるべきは、国民投票に備えることではなく、「いまやったら負ける」と相手に思わせること、国民投票をさせない雰囲気をつくること。それは可能です。

岸田に「国民投票したら負ける」と思わせるーまずは統一教会徹底追及
まず、自民党とカルト教団・統一教会との癒着・野合を徹底的に暴くことです。安倍晋三は、国会で立憲民主党の議員が発言しているときに「共産党」とか「日教組」などというヤジをとばしていました。カルト教団の教義(共産主義=悪魔)に洗脳された政治家だったんです。韓国では統一教会は政治活動を禁止されています。日本は、信じられないほどカルトに寛容です。オウム真理教という事件があったにもかかわらず、いまもカルトは好き勝手に活動している。
わたしは障害者施設で働いてきましたから、いろんなカルトが障害児をもった親に働きかけ洗脳する姿をみてきました。「あなたのお子さんの障害は…」と働きかけられると、ワラにもすがる想いでかれらに従ってしまう。若い人は、オウム真理教事件の後に生まれたのですから、あの事件を知らない。
自民党とカルト教団の癒着を許すなという追及が、いまいちばん自民党がいやがることです。どこまでも追及し、カルト教団が政治に関わること自体を許さないというところまで追いつめましょう。

ジェンダー平等と命を守る政治
そして、自民党・公明党・維新には絶対できない政治、二つのことをアピールしましょう。
一つは、ジェンダー平等です。
昨年の都議選のときに自民党候補の応援に西村とか丸川珠代が、私の地元・八王子にやってきました。丸川は冴えない自民党のオジサン候補の横に立って「○○を男にしてやってください」と叫びました。衆院選で落選した石原伸晃の陣営では、女性の選挙スタッフ全員に真っ白なエプロンをつけさせました。性差別のかたまり、それが自民党です。ジェンダー差別は自民党の党是です。
差別や不平等とたたかってきたわたしたちだから、ジェンダー平等を実現できる。自民党には絶対できない。
もう一つは、命と暮らしを守る政治です。
安倍はさかんに「アベノミクスで雇用を増やした」というが、増やしてきたのは非正規雇用です。1昨年、60代の女性路上生活者が殴り殺される事件がありました。殺されたときの彼女の所持金は8円でした。彼女はかつて夫のDVで離婚し、非正規雇用で働くようになった。そして男たちに殴り殺された。
新宿で炊き出しをしているときに双子の女の子を連れたシングルマザーがやってきた。女の子になにが飲みたいと聞いたら「コーンポタージュスープが飲みたい」という。少しでもおなかの足しになるものをと子ども心に思っていることがわかる。スープを受け取った女の子は、すぐに飲むのではなく、もう一人にさわらせて指を温めさせた。母親に「どうして生活保護をうけないのか」と聞くと、役所で「確かに生活保護は受けられます。だけどお子さんがいじめられますよ」と言われ、受給をあきらめた。これがいまの日本の生活保護をうけさせないための「水際作戦」なんです。
「経済よりも命でしょ」と言おう。自公維新にはできない、命と暮らしを守る政治を訴えましょう。
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提灯型社会で沈黙する若者たちに、上から目線で語るな
高齢者もSNSを使いこなしてはたらきかけよ
みなさんのなかには、どうしていまの若者はこんなにひどい目にあっているのに声をあげないんだと思っているかたがいると思います。わたしが生まれたときには、バブルは崩壊しソ連は消滅していました。ネットを見れば「月10万円で生きる仕組み」が載っており、「世の中を変えよう」ではなく、自分の工夫で生きのびる方法に目がいきます。暗闇の中を、片手に提灯を持って、自分の足元だけ照らして歩いている。それが今の日本であり、提灯型社会です。暗闇は街灯で照らせば両手を自由にして歩けるよ、というのが北欧、街灯型社会です。
そんな若者たちに「もっと怒れ」「足元から目線をあげろ」「こんなことも知らないのか」などと上から目線で説教するのはまったくのムダ、してはなりません。怒りを奪われてしまっているのです。テレビも新聞も見ないので、みなさんの声は届きません。みなさんが若者に声を届けたかったら、ガリ版→コピー機→携帯電話から一歩進んで、SNSを使いこなすようになってください。韓国には「親指世代」と「人差し指世代」という言葉があります。若者が片手でスマホを操作しているのに対し、高齢者が両手を使って人差し指で操作している姿をさしています。しかし、たとえ人差し指であっても、韓国では高齢者もSNSを使いこなしています。みなさんも、ぜひそうなってください。説教するのではなく、提灯を持って歩いている若者に寄り添ってください。

ジャンヌダルクと言われるのがとてもイヤ。死んじゃうじゃん。
楽しくない運動には人は寄ってこない。
わたしのことを「ジャンヌダルク」という人がいて、とてもイヤです。死んじゃうじゃん。悲壮な顔して、世の中を変えようと言ってる人のそばには、だれも寄ってきません。わたしたちはいま「おこぼれ街頭署名」というのを高尾山でやっています。高尾山の登り口で署名活動をしていると、山頂のビアガーデンで一杯飲んだ人たちがゴンドラで下りてくる。この人たちに署名をよびかけるとめちゃくちゃ集まります。ほろ酔い機嫌で、「お、なにやってんの?」と寄ってくる人は「個人情報保護」とかのヨロイがほどけている。1人がするとわれもわれもとしてくれる。虫に例えては悪いけど、明るいところにしか虫は集まらない。人も同じ。暗い、悲壮な顔してるところに人は寄ってこない。
楽しく明るくカッコいい。わたし自身もそういう市民運動家でありたい。新しいことだけがいいのではないが、古くならないことも大切です。

75年憲法を変えさせなかったわたし達は、すでに勝利している(質疑応答から)
質疑応答では、日本会議について、個人情報保護に敏感な若者、市民運動家として生きるとは、韓国の労働運動について、東アジアの若者の連帯など、興味深いテーマが次々とでてきました。
菱山さんがSNSで「75年間、憲法を1条項も変えさせなかった私たちは、すでに勝利しているんだ」とアピールしたら、ネトウヨ・バカウヨがキィーッとなって罵詈雑言を浴びせてきた。よっぽど彼らの癇にさわったとみえる。日本の市民運動はほんとに地味です。韓国の1987年の民主化運動、数年前のキャンドル革命などは、派手で、ダイナミックで「世の中は変えられる!」と若者たちが確信している。日本では、駅前のハトかというほど地味な運動しかない。何時間かけて数筆の署名を集めるなんてことを何十年もやっている。だけどそれでいいんです。それがいいんです。草の根の力で、憲法を守ってきた。これからもそうしていきましょう。明るく、みんなが寄ってきたくなるような工夫をしながら。

なんという希望の星
いま33歳だという菱山さんを見ながら、小田実がべ平連の代表になったのは何歳のときだっけか、と遠い目になりました。「希望の星」などと言われては迷惑だと分かってはいますが、希望を抱かずにはいられません。中学生にしてアメリカ大使館前に座り込むという、筋金入りの市民運動家が、先頭にたって、改憲阻止、自公維新の悪政を許すなという旗を振っている。すばらしい。

嵐を呼ぶ少女の「私たちはすでに勝っている」に、乾杯。
調布「憲法ひろば」第182回(9月)例会「参院選の結果と憲法問題」9月18日(日)13:30〜15:30、たづくり1001学習室
『嵐を呼ぶ少女とよばれて―市民運動という生きかた』はるか書房、2017年、1600円+税。
posted by 呆け天 at 09:30| Comment(4) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年09月22日

調布で昇太・たい平二人会

「笑点」の延長のような落語会を楽しむ

昨夜(9月21日)開かれた調布の「春風亭昇太・林家たい平二人会」は、1300席の調布グリーンホールがほぼ満席。人気あるなあ。開演前のロビーで「笑点グッズ」が売れている。
二人ともマクラは徹底的に「笑点」。
たい平は、黄色い人(林家木久扇)の呆けが演技と地の絶妙なあわいであることをイジる。イスに座っているが骨折はもう治っている。しかしイスが楽であることを「学習」してしまったのでもはや座布団には戻れない。番組スタッフにしても、高い座布団に座らせて転倒・骨折などしたらこわいので、イスのままがいい。そのうち出演者全員が介護ベッドに横たわっている番組になります。手をあげる代わりにナースコールボタンをおす。座布団の代わりに、ベッドの上半身部分が徐々にせりあがってくる方式になる…。
演目は「今様替り目」。酔っぱらって帰ったサラリーマンが、連れ合いを相手に酒やつまみをだせと絡む。しょうがないからコンビニでおでんでも買ってこようかと、外出用にかるく化粧をなおす連れ合いに「コンビニ行くのになんで化粧なんかするんだ。あのミャンマー人の店員とできてるのか」と絡むばかばかしさ。出て行ったのを見届けて「いいカミさんだよ。あいつがいなきゃオレはどうしようもないんだ」と一人ノロケをダダ洩れさせてたら、まだそこにいた。なるほど、まるまる今に持ってきても成りたつ噺だったか。

昇太は、コロナ禍で「笑点」をリモートでやらざるを得なかった苦労話し。やる気のない小遊三はもと山梨の卓球高校チャンピオンだった。それだけでも会場から「ホーッ」。落語家は色紙に凝る。スポーツ選手みたいにマジックインキでなぐり書きなんてしない。わたしのバッグには何種類もの筆が入っている。小遊三は色紙に「寝てて転んだためしなし」と書く。ホントはアスリートなのに、あえてそう書く。あるとき「師匠、ほんとにそんな風に考えてるんですか」と聞いたら「おまえね。ハードルは上げるだけ上げて高くした方が、下をくぐり抜けやすいんだよ」…。
演目は「花筏」。昇太の「花筏」を聴くのは初めてです、ラッキー。昇太の古典落語は、徹底的に解体再編した昇太流(「壺算」「愛宕山」など)が死ぬほど可笑しいが、今夜の「花筏」はきわめてオーソドックス。しかし、そこは非体育会系、臆病をウリにしている昇太だけあって、相撲をとらざるを得なくなった提灯屋のビビリ具合が真に迫っておかしい。「すごい張り手だ」「提灯屋ですから」というサゲで大きな拍手がくる。結構な一夜でした。
昇太の色紙
ネットで昇太の色紙を見ることができます。あざやかな筆使い。自画像や小動物のイラストなどもきわめて巧み。「猫にごはん」なんて「猫に小判」をもじった落語のこころそのもの。落語芸術協会会長、笑点の司会。かつて、軽さ、小物ぶりで売ってた落語家が、いまや落語界の重鎮です。いいですねえ、落語の世界。
「笑点」の延長のような昇太・たい平二人会に、乾杯。
昇太たい平.jpg
春風亭昇太・林家たい平二人会 2022年9月21日18:00〜19:30、調布市グリーンホール。
関連:2021年07月17日、調布で、昇太、一之輔、小遊三https://boketen.seesaa.net/article/482475749.html
posted by 呆け天 at 09:45| Comment(0) | 落語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする