2017年08月02日

高校野球、東京予選準決勝を初体験する

「準決勝がいちばん面白い」と熱く語る高校野球通にぶらさがって

高校野球地方大会東京予選は、東地区が二松学舎大付、西地区は東海大菅生が勝者となり、清宮の早実が決勝で敗れたことが大きなニュースになりました。清宮フィーバーで、西地区決勝には3万人以上入ったそうで、あいかわらず高校野球は人気がありますね。
2週ばかり前の居酒屋談義で、話しが高校野球や清宮選手におよんだ時に、飲み仲間のAさんが「今年も神宮球場に準決勝を見に行く」という。今年も、ということは以前から行っていた。
Aさんは、自分も還暦まで草野球チームでプレーしてたというほどの野球好き。プロ野球はアンチ巨人、巨人以外で優勝しそうなチームを応援する、なので今年は広島。高校野球は神宮球場で、西東京か東東京の準決勝のうち面白そうなカードがある方を観戦するというのを何十年もやってきた。府中球場の予選もいくつか見るが、なんといっても地方大会の花は準決勝だという。
力があるチーム同士なので接戦になる、優勝に手が届く寸前という緊張感、やがてプロ野球で活躍するような選手が何人かいて目を見張るようなプレーを見せる、それを自分がみつける喜び、そんなに混まない…。
今年は、もし早実が準決勝に進んだら混むので西地区は敬遠し、東地区の準決勝を見に行くという。なるほどなあ。そこまで考えて見に行くのか。いちどぶらさがって行ってみるか。
神宮球場.jpg
ということで7月27日(木)東地区準決勝の2試合、東海大高輪台×東亜学園、二松学舎大付×関東第一を観戦しました。
チケットは並ばずに買え、Aさんがいつもそこで観戦するというネット裏最上階のひさし付きの席で観戦です。見晴らし最高です。意外なことに外野席には人を入れていません。
「外野が埋まるほど客が入るのは清宮がでるときくらい。明日の西地区準決勝は早実だから外野まで入れる、もし早実が決勝に進んだら満員になるんじゃないの」
これぜんぶそのとおりになって、準決勝では1万7千人、決勝では3万人以上入ったというのですから、事情通というのはすごいものです。
まわりのお客さんも、どこかのチームを応援するというのではなく、純粋に試合そのもの、はつらつとしたプレーを見るのを楽しみにきている雰囲気です。

東海大高輪台×東亜学園でめだったのは、東海大のブラスバンドの豪華さ。ほかのチームのホルンは1〜2台ですが、東海大は6台がきらめいて、低音の迫力がただごとではない。選手の体もなんだか東海大のほうが大きく感じられ、試合も5‐3で勝ち。東亜も小技のきいたプレーをみせるいいチームと思ったのですが、ノーシードで勝ち上がった東海大の勢いに押されたようです。
二松学舎大付×関東第一はなんと7回コールド8-1で二松学舎大付の勝ち。二松学舎大付は、1回の裏に先頭打者がヒットで出ても、2番打者がバントのそぶりも見せない。
「へえ、いまどきの高校野球はバントをしないの?」
「バントしないチーム、けっこうあるよ。なにもアウトひとつ献上する必要ないという考えの監督が増えてる」
連打でみるみる間に4点が入る。関東第一の高橋というピッチャーは140キロ台をビシビシ投げ込むのだが、二松学舎大付はひるむことなくがんがん打っていく。いいですねえ、これぞ高校野球です。
途中、わたしがトイレにいっているちょうどその時に、関東第一の石橋がホームランを放つという間抜けなこともありました。残念。
二松学舎大付先発の市川が7回6安打1失点におさえ、打線は関東第一の二人目のピッチャーも打ち崩して8対1のコールド勝ち。まさか、こんな大差がつく力関係のチームとは見えませんでしたが、高校野球はこわいですね。市川も高橋も、プロが注目しているピッチャーみたいです。

帰りは、信濃町駅近くの「森のビアガーデン」でお疲れさまの一杯。野外で飲むビールとバーベキューは最高です。年寄り二人には多すぎないかなど心配したバーベキューセットをあっさり平らげ、今見てきた野球プラス囲碁談議で大いに飲みました。

高校球児のはつらつプレーに、乾杯。
貴重な、高校野球地方大会準決勝体験に、乾杯。

関連:2016年08月11日、甲子園初体験。平和だなあ。http://boketen.seesaa.net/article/440947686.html
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posted by 三鷹天狗 at 08:52| Comment(0) | スポーツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月07日

哲学するボクサー・村田諒太が輝いている

「村田諒太 再起への哲学」(NHK BS1 7月1日)に拍手

5月20日のWBA世界ミドル級王座決定戦で、誰がどうみたって勝っている試合を、判定負けにされてしまった村田諒太。命がけのたたかいを、愚かな(たぶん金がらみの)ジャッジによって泥まみれにされる。人生の理不尽きわまれりです。
どれほどの悔しさだろうか。村田は立ち直れるのか。
そんな思いで見た「村田諒太 再起への哲学」(NHK BS1 7月1日 午前0:00〜)でした。試合からわずか一週間後(5月27日)に行われたインタビューは、そんな危惧を完全にふっとばしました。それどころか、日本に、これまでありえなかったタイプのボクサー=哲学するボクサーが出現したことを告げるものでした。
びっくりしたなあ、もう!という、50年前の三波伸介の口ぐせが浮かび、見終えたあとに、TV画面に向かってパチパチと拍手を送りました。

あらわれた村田は、傷一つない顔、さわやかな笑顔、澄んだおだやかな目をしています。
ダメージを隠せない顔、苦笑い、拗ねた目で現われたって不思議はない場面のはず。
インタビューアー(武田真一アナウンサー)は当然のこととして、深く傷ついたであろう村田の気持ちを思いやって「判定への世間の疑問」から入ります。
ところが村田は「自分にとっての最悪のシナリオは、変な判定で勝つこと」だったという、意表をつく言葉から話し始めます。「変な判定で勝利を奪われて憔悴しきっていると思われるかもしれませんが、そんなことはまったくない」という語りには、強がりもウソも感じられない。
「やりきった、ということですか」と問う武田。
「そうではない、これまで自分の実力に半信半疑だった。この試合で、世界の最強レベルと闘えることが分かった。ボクシングへの情熱の火に油を注がれた。」
もうこの辺で、完全に引きこまれましたね。
なんなんだ、このボクサーは。

プロデビュー戦の前の日に父・誠二と電話で話しているとき、怖いと泣き出してしまったこと。その場ではうまい言葉が浮かばなかった父は、これまで自分が人生で影響をうけてきた本を村田に送る。なんとそれはヴィクトール・E・フランクルの『夜と霧』『人生にイエスという』であり、ニーチェ『ツァラトゥストラはこう語った』であり、アドラー『嫌われる勇気』であり、というのですから、父親もかなりぶっ飛んでます。
ボクサーに読ませる本かよ!とツッコミが入るところですが、村田はそれらの本に没入し、ボクサーという過酷な職業を生き抜く指針としていく。
「自分の人生を決めるのは『いま、ここ』に生きるあなたなのだ」(アドラー)
「誰もそのその人の身代りになって苦しむことはできない」(フランクル『夜と霧』)
オリンピック金メダリストからプロへの転向で悩み逡巡する村田を、哲学や心理学の本が支える。
「金メダリストという偶像が壊れることへの恐怖だった」
「コントロールできないもの(レフリー、ジャッジ等)を気にしない。コントロールできるのは自分だけ」
「自分を受容する。世界戦の前に寝れないのはあたりまえと、あきらめとともに受容する」
ことばのひとつひとつが粒だっています。哲学しています。

さらに、エンダムとの世界戦の映像を見ながらの会話がすばらしい。
第1ラウンド、まったくパンチを出さなかったのは作戦だった。独特のカウンター技術をもつエンダムのパンチをみきわめるためだった。ブロックに絶対の自信を持つから可能な作戦だった。第1ラウンドの終わり間際、残り10秒に一発放ったパンチは「相手を脅そうと思ったから」だった。
第3ラウンド、笑顔を見せる。「そのパンチじゃオレを倒せないよ」「一流の選手相手に自分のブロックが通用している。だからでた笑顔だった」
第4ラウンド、ついに炸裂した村田の右。残り34秒で放ったカウンターがエンダムの顔面をとらえ、みごとにダウンを奪った。「カウンターは、狙って出すのではなく、偶然に入るもの」と冷静に語る。
エンダムが後半、体を寄せてきた。自分に、短い距離から強いパンチを打つ技術がないが故に、勝ちきれなかった。チャンピオンズラウンド(第11・12ラウンド)を闘っているとき、楽しかった。試合中に日本語で「来いよ!」といってた。「最後は殴り合いだろ」というシンプルな気持だった…。
「初めてプロとしての試合ができた試合だった」
いやはや、おごりもなく卑下もなく、あの死闘をこういうふうに語れるのか。すごいボクサーだなあ。

試合後、保育園に息子を迎えに行ったら「春道クンのパパ、負けちゃったね。だけどカッコ良かった」と息子の友だちの女の子にいわれた。息子は、ぜんぜんめげていなくて、ニコニコ自慢のパパだという顔をしていてくれて、それがうれしかった。
この一週間の間に浮かんだ言葉は、との問いに「人生に意味を求めてはいけない。人生からの問いかけに最良の答えを見い出していけ」(フランクル)をあげる。すごいね。
インタビューの終わり、村田の言葉に感動した武田アナが泣きそうになっている…。

インタビューから約1ヵ月が過ぎて、世間が黙っていなくて(なにしろWBAの会長が「村田が勝っていた」という)再度の世界戦が日程にのぼってきている。
武田アナとのインタビューとの時とは違って、もはや世界戦に向けて再始動し、ギラギラした目で「人生に平穏を求めるな」という言葉を口にする村田の映像がエンディングです。カッコイイ!

ミドル級に、日本人チャンピオンが生まれる?この目でみたい。

中学・高校のころ、あれほど夢中だったボクシングへの熱が冷めたのは、完全に負けている日本人選手が判定で勝つ試合を、何度も見せられたからだった。不正な判定ほど、生死をかけて闘うボクサーを冒涜する行為はない。
それでも、モハメド・アリの雄姿や、1980年代のミドル級、ハグラー、レナード、ハーンズ、デュランの死闘は胸を熱くして見てきた。いま、そのミドル級に、すばらしい日本人ボクサーが登場してくれた。
どんな選手に育っていくんだろうか。究極の格闘技・ボクシングに、しかもそのミドル級に、あのハグラーやレナードと並び称されるスーパースターが誕生するのだろうか。ドキドキします。

村田諒太よ、世界のスーパースターになれと祈って、乾杯。
村田諒太.png 村田諒太.jpg
「村田諒太 再起への哲学」(NHK BS1 7月1日(土) 午前0:00〜0:50)
関連:2015年12月31日、映画『クリード チャンプを継ぐ男』http://boketen.seesaa.net/article/431912308.html
2015年01月03日、安藤サクラ『百円の恋』http://boketen.seesaa.net/article/411714696.html
2014年08月07日、祝!小関桃世界王座連続14度目防衛!http://boketen.seesaa.net/article/403319968.html
posted by 三鷹天狗 at 10:57| Comment(0) | スポーツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年05月29日

岡崎慎司『鈍足バンザイ!僕は足が遅かったからこそ今がある。』

鈍足でも、ネガティブでも、トップアスリートになれる。

岡崎慎司といえば、日本代表のベテランFW。キャップ数(日本代表試合数)108、50得点(2017年5月現在)という、歴代3位の記録をもつ、れっきとしたエースです。記録はさらに伸びるでしょうから、55得点のカズこと三浦和良を抜いて、歴代2位になる可能性もある。
その岡崎が自分のことを、足が遅い、ドリブルがヘタ、視野が狭い、モテない、人気がない、いじられキャラ、ネガティブ思考…、トップアスリートとは思えない人間であると、率直に語っている本です。

高校を卒業して清水エスパルスに入団した岡崎は、フィジカルコーチ杉本の指導で、大学陸上部の女子選手と坂道を並走し、何本走っても一度も勝てなかった。それ以降、今でも杉本から走りかたを指導してもらっており、着実に成長しているのだが、ドイツに移籍してチーム内の短距離走の順番を測ったら2番目に遅いタイムだった。
つまり現役バリバリの鈍足FWというわけです。
ここから先が、通常のスポーツ成功ものがたりと少し違う。ふつうここからは、短所を嘆くのではなく、長所をのばせというオハナシにいくわけです。足が遅くとも、相手守備陣とのかけひき、裏に抜け出すスピードといった、自分の長所を伸ばせばいいんだ、少年たちよ!
ところが岡崎は、いま現在にいたるまで、自分の「鈍足」という短所の克服にとりくみ続けている。杉本の指導をうけ、ムダのない走り、トップスピードへの瞬時の移行といった、自分のいちばんの課題に挑戦し続けている。その執拗さがすごい。決して手をぬかず、科学的・合理的なトレーニングで一秒でも早く走れるようになるための努力をおしまない。
「足が遅くて良かったなあと僕はいつも思っている。足が遅いという強烈なコンプレックスがあったからこそ、今の僕があると確信しているからだ。足の速さではチームメイトに負けるから、たくさんのゴールを決めるにはどうすれば良いのかを常に考えてきた。足が遅いから、(杉本)龍男さんの提供してくれるトレーニングに全力で取り組むことで少しづつ早くなる喜びを実感できた。」
じぶんの短所にとことんむきあうという、いまどきあまり流行らない、しかし強烈な説得力をもつ考え方と実践です。

ネガティブ思考。
「怖い。試合が始まるのが怖い。プレッシャーを楽しむなんてもってのほかだ。」
「結局、僕はものすごく臆病なのだ。だから、最悪の事態を想像して気持ちをなえさせておく。つまり自分へのハードルを下げておく。そこまでして、なんとか試合に臨む。自分が臆病だとわかっているからこそ、謙虚に戦える。」
まるで「臆病剣松風」の瓜生新兵衛です(藤沢周平『隠し剣孤影抄』)。
ポジティブであることこそ一流アスリートの条件とされています。勝利のイメージ、成功のイメージを抱いて試合にのぞみ、実際にそれをひきおこす…そういう話ばかりが語られる。
しかし岡崎は「サッカーなんだから負けることもある」としか考えられない。この試合を負けたら、その次の試合どうするかということを考えてしまう。だから、勝ってもあまり舞い上がらないし、負けてもあまりおちこまない。ひとにすすめられても、流行りの「メンタルトレーニング」は、やらない。
鈍足でネガティブですが、それでなにか問題でも?という、逆張りの発想が冴えています、

一流アスリートの本は、際立ってこそ、おもしろい。

一流のアスリートの書いた本としては、落合博満の名著『采配』にならぶくらい面白いと感じました。
三冠王3回、監督をやればリーグ優勝あたりまえという、超がつく一流の落合は、「オレ流」を貫いて結果をだしてしまう。コーチのいいなりになるな、彼らの言うとおりにやって成績がおちても、だれもお前の生活の面倒などみないぞという、ミもフタもない「真実」が語られます。天馬空を行くような落合の言動は、凡人にとっては手が届かない、想像の及ばない境地をのぞく面白さに満ちています。
岡崎は、なんとか清水エスパルスに入れてはもらったが、「なんでそんなこともできないんだ」「下手くそ」という先輩の怒声におびえながら練習し、いじられキャラ・へらへらキャラで居場所を確保してきた。今でも、監督、コーチ、先輩たちが語ってくれたこんな大切なことばがあると、たからもののように語ります。
2012年に国際試合から帰って成田空港に着いたとき、香川真司のとなりにいた岡崎は、香川ファンの女性に「おとなりは…お友だちの方ですか」といわれてしまったエピソードを書いている。フツー人とみられてしまったのだ。いやはや。落合とは逆の意味で際立っています。

われらが鈍足フォワード、フツー人岡崎慎司に、乾杯。
鈍足バンザイ!  僕は足が遅かったからこそ、今がある。 -
岡崎慎司『鈍足バンザイ!僕は足が遅かったからこそ今がある。』幻冬舎、2014年、1300円+税。
関連:2015年07月03日、なでしこジャパン決勝進出。強い!http://boketen.seesaa.net/article/421700709.html
posted by 三鷹天狗 at 11:47| Comment(0) | スポーツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする