2018年01月19日

山田真由美・文、なかむらるみ・絵『おじさん酒場』

奇特な「おじさん萌え」に笑えます。

文・山田真由美(推定40代)は、居酒屋で飲んでるおじさんに奇特な思い入れをする。
「酒場にたたずんでいるおじさんたちの背中や横顔」に、「まだ見ぬ世界の入り口」や「引き出しの宝庫」を感じるなどという。
山田にかかれば、独りでじっと飲んでいるおじさん、2〜3人で談笑しているおじさん、女とみれば声をかけてくるおじさん、そのどれもが、それぞれに好もしいらしい。
不思議なことをいうものだと感心するしかない。
年代的にはこちとら観察される側のおじさんとして何十年も居酒屋で飲んできましたが、ここで著者が思い入れるような「まだ見ぬ世界」とか「引き出しの宝庫」とかは、まったくありません。
一人でふらりと入る、仕事帰りに「ちょっと寄る?」と連れ立って入る、酒好きと誘い合わせて評判の店に行ってみる、旅行先であてずっぽうに入る…居酒屋に行くいろんなバリエーションがありますが、飲みたいから飲んでるだけで、「背中」だの「横顔」だのといわれる筋合いはない。
なんでこんな勘違いをしてるんだろうと思ったら、第15回「センセイなおじさん シンスケ・湯島」に太田和彦がでてきて納得。巻末では「酒場の作法あれこれ」という山田・なかむらとの鼎談もしています。山田は太田の著作のファンで、そこに書かれている太田の姿にメロメロ。その投影として酒場のおじさんたちを見ているようです。

太田は『居酒屋百名山』『居酒屋を極める』など数々の居酒屋本を書き、テレビでも「いい旅いい酒いい肴」などに出演している。私も太田の本の愛読者です。
「古くて小さい店」がいい。そこに一人で飲みにいって、黙って飲む。他の客とも店主とも、「うわべだけのつきあい」にとどめる…。こういう太田の「居酒屋流儀」は確かにひとつの見識です。しかし、大田には「居酒屋で一人前の男になる」だの「一目おかれる存在になる」だのという、つまらない「ダンディズム」があり、わたしはこれには「なに言ってんだか」という感情しかわきません。「そっちで勝手に一目おかれてろ」てなもんです。
だいたい「チェーン店にはぜったい入らない」という思い入れも、わたしにはありません。いつでもどこでもどんな店でもOK。おやじが勘違いして能書きたれるような店とか、学生が騒いでうるさい店とかには、二度といかなければいいだけの話しで、存在を否定するようなことを思いも言いもしない。
酒を飲むことに、理屈も、流儀もいりません。「酒乱」(酒を飲んで暴力沙汰にいたる)という、絶対に許せないバカ者をのぞけば、どんな飲み方も自由です。

しかし、わたしが、大田の中の「余計なこと」と思っている部分に、山田は強く反応するようで、呑兵衛おじさんの背景などに勝手な思い入れをふくらませる。
私が好きなマンガ『あたしンち』(けらえいこ)のどこかに、弟ユズヒコの友だちが、勝手に姉みかんの洗濯物の下着を想像してコーフンし、ユズヒコは姉の現実の姿を思い出して、ばっかじゃないのと反応する場面がありました。山田の、おじさんの「背中」や「横顔」へのコーフンは、ユズヒコの友だちの、みかんの下着へのコーフンと同じです。
しかし、妄想のコーフンでまるまる一冊読ませる筆力があることも確かです。次作がでたら、また読みたい。

なかむらるみの描く「ヘンな生きもの」としてのおじさんにも笑えます。

山田の思い入れとは対照的に、イラストのなかむらるみ(推定30代)は、ヘンな生きもの、おもしろい生きものとしてのおじさんを活写して笑えます。
二人のコンビだから、最後までもたれずに読むことができた。なかむらは『おじさん図鑑』(2011年)という、みもふたもないおじさんスケッチ集をだしています。
むかし、20年近く毎週1〜2回通っていたM駅南口の居酒屋「Y」の親父は、「女性の一人客おことわり」という、フェミニストに見つかったら騒動になるような経営方針だったなあ。

女性客が、身構えずに居酒屋で飲む時代が来ていることに、乾杯。
おじさん酒場 -
山田真由美・文、なかむらるみ・絵『おじさん酒場』亜紀書房、2017年、1400円+税。
関連:2015年03月14日、太田和彦『居酒屋を極める』http://boketen.seesaa.net/article/415579123.html
posted by 呆け天 at 11:14| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月02日

痛風との対話

朝の散歩をしていると、まれに左足親指のつけねを、つんつんしてくるやつがいる。
「あのう、痛風ですけど…」と遠慮がちにはなしかけてくる。
5月に1週間の激痛を体験した身としては、あの痛みの再現だけはごめんということで、細心の注意をはらっています。
なにより好きなビールは、週一回、囲碁・飲み仲間との最初の乾杯のときのコップ一杯だけときめている。あとはプリン体ほぼゼロの焼酎を、そのときの気分でロック、お湯わり、水割りのいずれかで飲む。日本酒も極力自制している。
前は一ヶ月に1〜2回だった休肝日を、今は週に2回くらい設けている。プリン体の多いとされる酒の肴(干物、モツ系)はできるだけ避けている。

それなのに痛風の出先機関のようなやつが、ときどき左足親指のつけねをつんつんしてくる。
いきなり暴れまわるようなことはなく、「えっと、ここだっけ」と定期訪問みたいにノックしてくる。
「なんの用?呼んでないよ」
「さいですか。ちょっとごきげんをうかがいに」
「だいたい、きのうだって日本酒一合だけだよ。お前さんがでてくる筋合いじゃないでしょ」
「先週の土曜日はかなり大量に摂取されたような」
「だって焼酎だけだよ。プリン体はほぼゼロだろ」
「いえ、ゼロではありません。それに大量摂取されますとわたしどもにも連絡がくるようになっておりまして」
「わかった。今日は休肝日にするから」
「さいですか。そゆことなら」
というような会話で、引っ込む。

これがくると、その日の夜は休肝日。ややもすれば次の日も休肝日になる。ま、たしかに抑止効果はあります。
こいつの秘めている凶暴さは経験済みなので、きまぐれなつんつんのバカっぽさにも、油断するわけにはいきません。
ヤな奴に好かれてしまったなあ。いつまでつきまとわれるのか。憂鬱です。
20年もまえに痛風をやっているのに、いまはビールなどガンガン飲んでる飲み仲間。早くあの境地にたどりつきたい。
痛風を知りたい方へ 痛風の歴史  痛風の原因と対策
イラストは、愛読する「痛風財団」HPより。
posted by 呆け天 at 09:54| Comment(2) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月27日

西調布「雅(みやび)」に、囲碁・酒なかま参上

俳優・亀岡拓次の暮らす町で、秋田の酒・両関に酔う

他でもない西調布に、日本酒は秋田の酒「両関」しか置いていない小料理屋があります。
置いてある日本酒の多様さで客をひきつけるのが流行りのご時世に、全国的にはメジャーとはいえない「両関」一本で勝負するって、かなり大胆な考えです。
実は、囲碁・酒なかまのひとり I さんが、「両関」とは浅からぬ縁がある人で、湯沢からとりよせた「山廃純米」を分けてもらって飲んだりしています。あまりおいしくて、しばらく他の日本酒が一格オチに感じられて困るといった問題も生じます。
両関のホームページで、東京で両関が飲める店として紹介されているのが、「雅(みやび)」です。
I さんと二人で5月にいちど飲みにいき、両関純米酒を堪能しました。料理のうまさも抜群です。
そのとき、現在のマスターのお父さんが作られた店であること、その時代から日本酒は「両関」一本であることなど、さまざまなお話しをうかがいました。

囲碁仲間との酒席でそのことが話題にでて、「それでは一度のぞいてみたい」の声があり、行ってきました。台風騒動もおさまった8月24日、夕方6時に調布駅改札口に集合したのは5人です。
一駅で西調布。なんでも再開発の予定があるとかで、駅の北口は大きな空き地になっています。その先にある「西調布一番町」という飲み屋街の一角に、大きなのれん、しゃれた看板をだしているのが「雅」です。

全員、ひざや腰に問題がある客だと事前に電話でいっておいたので、畳の座敷ではなく、カウンター席8席中5席確保で飲みはじめました。
前回おじゃましたときには両関純米酒のおいしさに酔うのが主眼でしたが、今回は大人数でゆっくり飲みながら、あれこれと肴をたのんで、食べる方もたっぷり楽しみました。
実においしい。特に今回サイコーと感じたのは鮎のササ焼きです。鮎って、こんなにおいしい魚だっけと舌が驚いています。
他の肴もみな、マスターの神経の行き届いた仕事がしてあり、やはり「小料理」の看板が似合う店です。
良い店、うまい酒・肴、なかまたちとの談笑。のん兵衛にとって、至福のひとときです。

帰路の問題もあるので、2軒目は寄らずにほろ酔い機嫌で帰りました。
通りを歩きながら、このちいさな街に、こんなに密集した飲み屋街がなりたつのかと余計な心配がわきます。
そのうち、そうか、「俳優・亀岡拓次」はこの街の住人で、この飲み屋街のどこかのスナックで常連客とカラオケやっていたなと思い出しました。映画では、さびれ感、場末感を色濃く感じさせるつくりになっていました。確かに、そういう感じもあります。しかし、地元の呑み助にとってはそれこそ余計なお世話。きっと今日も、亀岡はこの街のどこかの飲み屋で、機嫌よく一杯やってるでしょう。

西調布にある、両関とおいしい肴の店「雅」に、乾杯。
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関連:2016年02月13日、映画/横浜聡子監督『俳優・亀岡拓次』http://boketen.seesaa.net/article/433734162.html
posted by 呆け天 at 08:12| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする