2018年02月05日

北千住で「戌年落語会」というアマチュア落語会を楽しむ

演者全員が戌(いぬ)年。なんともおめでたい。

古い友人が属している「戌年落語会」というアマチュア落語愛好家の公演があり、北千住まで出かけました。12歳から84歳までの戌年生まれの17人が、昼の部・夜の部に分かれての公演。今年は戌年ですから、なんともおめでたい。私は、友人がでている昼の部を聴きました。

小噺   寝床家孫道楽(平18)
初天神  不動坊歌宴(平6)
ぞろぞろ 下町亭粗忽(昭21)
反対俥  若木家志楽(昭33)
茶漬間男 関大亭豆蔵(昭45)
法事の茶 若木家元翁(昭33)
  ─ 仲入り ─
涙をこらえてカラオケを 久寿里菊之助(昭33)
看板のピン えぞ家葉櫻(昭33)
毛氈芝居  古今亭志んー(昭21)

どの演者も、プロの落語をふまえつつ、自分の個性をいかした工夫で満員の客をわかせました。
中入り前の若木家元翁「法事の茶」。幇間が手に入れたお茶を焙じると、冥界から故人がでてくる。落語家(先代文楽、立川談志など)政治家(田中角栄など)を巧みな物真似で演じ、締めは太い眉をはりつけた淀川長治、当日いちばんの笑いをとりました。
久寿里菊之助「涙をこらえてカラオケを」は、桂文枝の創作落語。「カラオケ葬」という卓抜なアイデアが楽しい。
トリの古今亭志んー(しんぼう)「毛氈芝居」は、芝居を初めてみた殿様が、舞台の上の人殺し犯を逮捕させるという一幕。芝居噺がたいへんな迫力で、客を惹きつけました。
いやはや、たいしたものです。演者は、北海道からも名古屋からも来ている由。落語にうちこむ情熱がただごとではありません。それぞれの亭号も、プロのような縛りがなく、きままにつけていて、しかも思い入れがある。下町亭粗忽なんて、なんともいい名前です。

帰りは居酒屋「千住の永見」で軽く一杯
北千住まで来たのですから、帰りはどこぞで一杯やらずにはおられません。西口にまわってそぞろ歩き、「千住の永見」という店に入りました。近所の人が自転車で来てる感がいいね。まだ5時前というのに、ほぼ満席です。マグロぶつ、もつ焼き、エシャロットなど定番のつまみでビールと日本酒。ほろ酔いで帰路につきました。

落語は聴くものという固定観念を破って、自ら演じるみなさんの熱意と研鑽に、乾杯。
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「戌年落語会」2018年2月3日(土)東京労音東部センター(北千住東口徒歩7分)。木戸銭500円。
posted by 呆け天 at 11:30| Comment(0) | 落語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年12月18日

春風亭昇太独演会 12/17三鷹公会堂

「看板の一(ピン)」で大笑い

例によってカジュアルな服装でオープニングトーク。「三鷹と亀有でやりたい落語をやるのが、私にとっても楽しみ」と客席を喜ばせる。
いろいろと問題の多い最近の公益社団法人ですが、私が所属する落語芸術協会も公益社団法人です。最近開かれた理事会で(私も理事のひとり)年末にむかって会員が問題行動を起こさないようにという申し合わせが行われた。副会長の小遊三師匠から、「飲んでも脱ぐな!」というお達しが、会員全員に伝えられた。

一席目の長いマクラで、昨年の紅白歌合戦の審査員に桂歌丸の代役で選ばれた顛末と、間近でみた大谷翔平選手、AKB48、天童よしみなどの生き生きとした描写で笑いをとる。大谷は190センチ近い身長、整った顔、年配者が座るまで立ったままニコニコしている。決して、ふんぞりかえって二人分の席をとるような真似をしない。
「あんなに見た目がいいんですから、せめて性格が悪くなくてどうするんですか!」
紅白の収録は5時間にも及ぶそうで、その間、客とTVカメラの眼があるから居眠りもできず、手拍子、ペンライト、タオルぐるぐる回しなどでくたびれ果てる。
「歌丸師匠だったら、間違いなく死んでました」

一席目の「看板の一(ピン)」は軽くてばかばかしい噺で確かに昇太向きではありますが、いやはや笑わされました。なんでこんなにおかしいんだろうと不思議な気持ちになります。特別な演出も、独自のくすぐりも入れているようにはみえないのに、「隠居の親分」の一挙一投足がおかしい。老いて呆けたとみせておいて、かっこよくタンカを決める反転があざやか。真似て失敗する若い衆のバカさ加減がまた、たまらないほどおかしい。
軽い噺ほど面白い、昇太落語の真髄に触れたような一席でした。

その場着替えで、二席目は「そば清」。そばの大食いで有名な清兵衛が、甲府でウワバミが人間を消化するさまを目撃する。そのとき蛇が舐めた草を採取してきて大食い勝負に挑んだが…。落語には「あたま山」とか「そば清」とか、人間の身体を扱うシュールなネタがあります。清兵衛の描写をすこし女性っぽくみせて軽めの笑いをとる演出でした。
休憩後の三席目は「宿屋の仇討ち」。江戸っ子三人組が、旅先の神奈川宿で大はしゃぎ。隣室の侍はうるさくて寝ることもできない。客引きの伊八を呼んで静かにさせるよう言いつけるが…という一席。侍が「イハチー」と繰り返し呼ぶところで笑いがおきる。
三鷹ではかなり前に小三治がこれをかけて「イハチー」のところで会場が揺れるような笑いをとった。小三治のもつ独特の偏屈さと侍の怒りが共振し、えもいわれぬほどの笑いが爆発した。忘れられません。
昇太の場合、偏屈さという要素は皆無の落語家ですから、侍の怒りにはあまり重点がおかれず、江戸っ子三人組のばかばかしさの方で笑いをとる演出となりました。

特別な演出をしないでうける落語を試してみた

三席やれば一つは新作をいれるとか、古典落語とはいっても他のどんな落語家もやっていない工夫や演出をみせるとか、そういう要素のない独演会でした。
「やりたい落語をやりたいようにやる」というフリートークではじまった会で、あえてこのような構成にしたということは、今回は特別な演出をしないでも笑いをとれる落語を試した、ということでしょうね。
一席目の「看板の一(ピン)」で、みごとにそれが成功していました。
2時開演で終了が4時20分、満席の客をひきつけ笑わせ満足させる、みごとな独演会でした。

昇太の、「看板の一(ピン)」に、乾杯。
昇太2.jpg 昇太3.jpg 昇太.jpg
春風亭昇太独演会 2017年12月17日(日)14:00〜、三鷹公会堂光のホール
posted by 呆け天 at 10:48| Comment(0) | 落語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年12月04日

柳家小三治師匠の、頸椎手術成功と高座復活を祝す

噺(はなし)の中に出てくる登場人物は、この先どうなるのか何も知らない

朝日新聞「語るー人生の贈りもの」に、頸椎手術が成功した柳家小三治師匠(以下敬称略)が登場した。やれ嬉しや。全14回の、充実した内容で、堪能しました(10月30日〜11月17日)。
8月に体調を崩して高座をキャンセルしたというニュースが流れました。変形していた頸椎を手術、入院は3週間に及んだが、退院5日後の9月13日、岐阜県多治見市の落語会で高座に復帰したという。良かったよかった。

厳格な教育者だった父への反発、高校生の時ラジオの「しろうと寄席」で勝ち抜いたこと、大学受験に失敗して柳家小さんに入門を決意。このとき父が小さんに「これからは落語家も教養のある落語をやらなきゃいけない。師匠からも大学に行くように言ってください」と頼んだ。郡山剛蔵少年(19歳の小三治)は「冗談言っちゃいけねえ。教養のある落語なんておもしろくねえ」と師匠の前でタンカをきったという。本人はすっかり忘れていたが、真打昇進のときに、小さんがこのエピソードをうれしそうに語っていたという。
さすが、栴檀は双葉より芳しです。

二つ目のある日、小さんに「お前のはなしはおもしろくねえな」と一刀両断された。
静岡県沼津に行ったとき、芸者・笑子にいわれた「ちゃんと落語をやって」というきつい注文。
家元だの議員だのになったりしなければ、とんでもない落語家になっていたという、談志への評価。
「いずれ志ん朝さんが落語協会の会長になって、私が副会長として補佐しよう」と思っていたこと。
小さんが「これが現代の落語っていうもんだよ」とまで評価していた話芸の達人・小沢昭一との交流。
どのはなしも、味わい深くて興が尽きません。

最終回の第14回で、これぞ奥義ともいうべき「落語をおもしろくやるコツ」を披露している。
落語は、同じはなしを繰り返しやるから、落語家自身が、慣れて、飽きてくる。それが客にも伝わってつまらなくなってしまう。この難題について、小三治の師匠の師匠、四代目の小さんは「初めて聞く客に初めてしゃべるつもりでやれ」と教えた。
しかし、しょっちゅう来ている客もいるし、どうしてもムリがある。
ある日、はっと気づいた。
「客もよく知ってる。はなし手もよく知ってる。だけど噺(はなし)の中に出てくる登場人物は、この先どうなるか何も知らない。そう思ってやると、いつもやってる噺じゃなくなる。」
なるほどなあ。
この小三治の言葉は、初めて聞きました。落語の真髄をあらわした言葉ではないでしょうか。
「まあ、これが病気で、『大惨事』になり損なった、『小三治』のいまですかねえ」と、ながいながいインタビューが結ばれている(いうのもヤボですが「大惨事」=大三治と小三治をかけたシャレ)。
「噺にでてくる登場人物は、この先どうなるか何も知らない」という落語の奥義に、感嘆の拍手を。

小三治の現役高座をみた幸せ

呆け天は幸いなことに、三鷹で行われた小三治独演会を数回みています。長いマクラ、軽くてとぼけた味わいの噺にひたっていると、極上の温泉につかったようないい気分になります。同行の家人など、必ずぐっすりと寝入ります。
昇太や志の輔の、満員の客と切り結び、勝負しているような白熱した高座もすばらしいが、小三治や小遊三、鯉笑の、とぼけた、肩の力の抜けた「落語は、肩ひじ張って演るもんでも、訊くもんでもありません」という落語もいい。
80代の小三治の高座を、なんどもみたいものです。

頸椎手術をきりぬけ、高座に復活した柳家小三治師匠に、乾杯。
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朝日新聞「語るー人生の贈りもの」(10月30日〜11月17日)。
posted by 呆け天 at 08:17| Comment(0) | 落語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする