2018年05月18日

柳家小三治一門会  調布で小三治の高座を堪能する

約1時間のマクラで、3曲を歌う

昨年8月の頸椎手術という大ピンチを脱した柳家小三治が、調布に来てくれました。
5月15日(火)18:30〜21:00「柳家小三治一門会」調布グリーンホール
柳家小はぜ『平林』
柳家福治『安兵衛狐』
 ー仲入りー
柳家三之助『替り目』
柳家小三治『小言念仏』

弟子3人のあと、7時50分ごろからきっちり9時まで、1時間以上の大熱演で、調布のファンを楽しませてくれました。
マクラは高畑勲のお別れ会です。
「今日行ってきたんです。ジブリの、高畑勲さんのお別れ会。わたし、葬式とかお別れ会とか大きらいなんです。いえ、本人には会いたいんですよ。だけど、それをやる人たちが、こう、ぶあーっと(手を広げる)、それがヤなんですよ。」
「いい表情の写真でした。ニコニコッとした、ふにゃっとした、生前なんどもお会いしていたときの、まんまの表情でした。」
「わたし、年に一度ジブリによばれて150人か200人か、それぐらいの社員の人たちのまえで落語をしてきたんです。高畑さんがなぜかわたしの落語を気にいって、よんでくれてたらしいです。」
「代表して弔辞を読んでいたあの人(宮崎駿監督)は、この落語会には一度もきていませんでした。」

話しは、あちらにとび、こちらにとび、「オレ、なんでこんな話をしてんだろ」と繰り返し自問しながら、芸術表現と商業主義の相剋や折り合いという、微妙な問題のまわりを行きつ戻りつします。
つまり、大ヒットする宮崎作品にくらべて、高畑監督の作品はあまり売れなかった。あの人だって売れたかったと思いますよ。だけど、そんなことはおくびにもださず、あのふにゃっとした笑顔で逝ったんです。もし『かぐや姫の物語』を途中までみてやめちゃった人がいたら、帰ってからきちんとみてください、いい映画です、ということをほぼ1時間かけて語ったマクラでした。

このテーマをめぐって引き合いにだされるのは、小椋佳、井上陽水、小沢昭一、自分自身。
いきなり真綿色した シクラメンほど 清(すが)しいものはない 出会いの時の…(「シクラメンのかほり」)と歌い始めたのには驚きました。
私は、ナマの小三治は三鷹でしか聞いたことがなく、歌った場面に遭遇したことはありませんでした。とてもうまい。歌い終わると客は大拍手。
「拍手したってもう歌いませんよ」
この人(小椋佳という固有名詞がでてこない)なんか、誰にも知られないところでやってる人だったのに、この曲の大ヒットで…と続きます。

「今日のお客さんはお若いから知らないでしょうけど、同じころに井上陽水なんていう人もいましたね」
窓の外ではリンゴ売り 声をからしてリンゴ売り きっと誰かがふざけて リンゴ売りのまねをしているだけなんだろう…(「氷の世界」)
「お前のほうがよっぽどふざけてんじゃねえのか」(爆笑)
マイナーだった陽水がやがて…。

「高畑さんは東大の仏文です。わたしが知っている人でもう一人仏文がいて小沢昭一さん。こちらは早稲田の仏文で、もうまったく違いましたね。とにかく『受けた〜い』という人でした」
小沢が第1回の「やなぎ句会」で披露した「煮こごりの 出るスナックの ママの過去」をめぐる愉快な回想。

高畑さんはたいへんな音楽通で、カラヤンやマリア・カラスが大好きだった。わたしはカラスより美空ひばりが好きです。
髪のみだれに 手をやれば 赤い蹴出(けだ)しが 風に舞う…(「乱れ髪」)
会場から大きな拍手がわく。
「これ、カラスが歌ったら、どうなりますかね」
大きなありったけの声量で、投げて届かぬ 想いの糸が…(爆笑)
「もし、高畑さんとわたしが、カラスかひばりかなんて話をしたら、どういうことになってたんでしょうねぇ」

延々と続くマクラ、もしかしたらこのまま落語がなしということもあるのかなというくらいの時間になって、「陰陽」の話しに変わっていき、そのまま『小言念仏』に。これがまた、すばらしい。
いやはや、堪能しました、小三治一門会。滑舌、声の張り、テンポ。どれをとっても衰えというものを感じさせません。固有名詞がでてこないことも、笑いにとりこむ。客のほうも「正解」をいうような野暮をしない。いい会です。これからも、いっそう自由なマクラを聞かせてくれる小三治を楽しむことができそうです。

いいなあ調布の小三治。これからもたのみます。

実は4月1日に三鷹で「柳家小三治独演会」がありました。わたしは「三鷹市スポーツと文化財団」友の会(MAROL)会員なので、1月21日の会員チケット発売日Am10:00 ジャストから電話し続けましたが、チケットとれず。その後の、一般の発売日も当然ダメ。もはや三鷹の落語会で小三治のチケットをとるのはムリみたいです。
いっぽう調布の小三治一門会は、チケット余裕で入手。当日も空席チラホラ。なんだか小三治のほうもあるユルさがうかがわれて、すごくいい感じでした。三鷹の独演会では、マクラが1時間なんてことも、歌うなんてことも、いちどもなかったですからね。

いいなあ調布の小三治、1時間のマクラに、乾杯。
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5月15日(火)18:30〜21:00「小三治一門会」調布グリーンホール
関連:2017年12月04日、柳家小三治師匠の、頸椎手術成功と高座復活を祝すhttp://boketen.seesaa.net/article/455201216.html
posted by 呆け天 at 10:13| Comment(0) | 落語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月05日

北千住で「戌年落語会」というアマチュア落語会を楽しむ

演者全員が戌(いぬ)年。なんともおめでたい。

古い友人が属している「戌年落語会」というアマチュア落語愛好家の公演があり、北千住まで出かけました。12歳から84歳までの戌年生まれの17人が、昼の部・夜の部に分かれての公演。今年は戌年ですから、なんともおめでたい。私は、友人がでている昼の部を聴きました。

小噺   寝床家孫道楽(平18)
初天神  不動坊歌宴(平6)
ぞろぞろ 下町亭粗忽(昭21)
反対俥  若木家志楽(昭33)
茶漬間男 関大亭豆蔵(昭45)
法事の茶 若木家元翁(昭33)
  ─ 仲入り ─
涙をこらえてカラオケを 久寿里菊之助(昭33)
看板のピン えぞ家葉櫻(昭33)
毛氈芝居  古今亭志んー(昭21)

どの演者も、プロの落語をふまえつつ、自分の個性をいかした工夫で満員の客をわかせました。
中入り前の若木家元翁「法事の茶」。幇間が手に入れたお茶を焙じると、冥界から故人がでてくる。落語家(先代文楽、立川談志など)政治家(田中角栄など)を巧みな物真似で演じ、締めは太い眉をはりつけた淀川長治、当日いちばんの笑いをとりました。
久寿里菊之助「涙をこらえてカラオケを」は、桂文枝の創作落語。「カラオケ葬」という卓抜なアイデアが楽しい。
トリの古今亭志んー(しんぼう)「毛氈芝居」は、芝居を初めてみた殿様が、舞台の上の人殺し犯を逮捕させるという一幕。芝居噺がたいへんな迫力で、客を惹きつけました。
いやはや、たいしたものです。演者は、北海道からも名古屋からも来ている由。落語にうちこむ情熱がただごとではありません。それぞれの亭号も、プロのような縛りがなく、きままにつけていて、しかも思い入れがある。下町亭粗忽なんて、なんともいい名前です。

帰りは居酒屋「千住の永見」で軽く一杯
北千住まで来たのですから、帰りはどこぞで一杯やらずにはおられません。西口にまわってそぞろ歩き、「千住の永見」という店に入りました。近所の人が自転車で来てる感がいいね。まだ5時前というのに、ほぼ満席です。マグロぶつ、もつ焼き、エシャロットなど定番のつまみでビールと日本酒。ほろ酔いで帰路につきました。

落語は聴くものという固定観念を破って、自ら演じるみなさんの熱意と研鑽に、乾杯。
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「戌年落語会」2018年2月3日(土)東京労音東部センター(北千住東口徒歩7分)。木戸銭500円。
posted by 呆け天 at 11:30| Comment(0) | 落語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年12月18日

春風亭昇太独演会 12/17三鷹公会堂

「看板の一(ピン)」で大笑い

例によってカジュアルな服装でオープニングトーク。「三鷹と亀有でやりたい落語をやるのが、私にとっても楽しみ」と客席を喜ばせる。
いろいろと問題の多い最近の公益社団法人ですが、私が所属する落語芸術協会も公益社団法人です。最近開かれた理事会で(私も理事のひとり)年末にむかって会員が問題行動を起こさないようにという申し合わせが行われた。副会長の小遊三師匠から、「飲んでも脱ぐな!」というお達しが、会員全員に伝えられた。

一席目の長いマクラで、昨年の紅白歌合戦の審査員に桂歌丸の代役で選ばれた顛末と、間近でみた大谷翔平選手、AKB48、天童よしみなどの生き生きとした描写で笑いをとる。大谷は190センチ近い身長、整った顔、年配者が座るまで立ったままニコニコしている。決して、ふんぞりかえって二人分の席をとるような真似をしない。
「あんなに見た目がいいんですから、せめて性格が悪くなくてどうするんですか!」
紅白の収録は5時間にも及ぶそうで、その間、客とTVカメラの眼があるから居眠りもできず、手拍子、ペンライト、タオルぐるぐる回しなどでくたびれ果てる。
「歌丸師匠だったら、間違いなく死んでました」

一席目の「看板の一(ピン)」は軽くてばかばかしい噺で確かに昇太向きではありますが、いやはや笑わされました。なんでこんなにおかしいんだろうと不思議な気持ちになります。特別な演出も、独自のくすぐりも入れているようにはみえないのに、「隠居の親分」の一挙一投足がおかしい。老いて呆けたとみせておいて、かっこよくタンカを決める反転があざやか。真似て失敗する若い衆のバカさ加減がまた、たまらないほどおかしい。
軽い噺ほど面白い、昇太落語の真髄に触れたような一席でした。

その場着替えで、二席目は「そば清」。そばの大食いで有名な清兵衛が、甲府でウワバミが人間を消化するさまを目撃する。そのとき蛇が舐めた草を採取してきて大食い勝負に挑んだが…。落語には「あたま山」とか「そば清」とか、人間の身体を扱うシュールなネタがあります。清兵衛の描写をすこし女性っぽくみせて軽めの笑いをとる演出でした。
休憩後の三席目は「宿屋の仇討ち」。江戸っ子三人組が、旅先の神奈川宿で大はしゃぎ。隣室の侍はうるさくて寝ることもできない。客引きの伊八を呼んで静かにさせるよう言いつけるが…という一席。侍が「イハチー」と繰り返し呼ぶところで笑いがおきる。
三鷹ではかなり前に小三治がこれをかけて「イハチー」のところで会場が揺れるような笑いをとった。小三治のもつ独特の偏屈さと侍の怒りが共振し、えもいわれぬほどの笑いが爆発した。忘れられません。
昇太の場合、偏屈さという要素は皆無の落語家ですから、侍の怒りにはあまり重点がおかれず、江戸っ子三人組のばかばかしさの方で笑いをとる演出となりました。

特別な演出をしないでうける落語を試してみた

三席やれば一つは新作をいれるとか、古典落語とはいっても他のどんな落語家もやっていない工夫や演出をみせるとか、そういう要素のない独演会でした。
「やりたい落語をやりたいようにやる」というフリートークではじまった会で、あえてこのような構成にしたということは、今回は特別な演出をしないでも笑いをとれる落語を試した、ということでしょうね。
一席目の「看板の一(ピン)」で、みごとにそれが成功していました。
2時開演で終了が4時20分、満席の客をひきつけ笑わせ満足させる、みごとな独演会でした。

昇太の、「看板の一(ピン)」に、乾杯。
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春風亭昇太独演会 2017年12月17日(日)14:00〜、三鷹公会堂光のホール
posted by 呆け天 at 10:48| Comment(0) | 落語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする