2017年07月17日

井上智洋『人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊』

BI(ベーシックインカム)なきAI(人工知能)はディストピアをもたらす、
BIのあるAIはユートピアをもたらす、という予言

本書は、若い経済学者が、AI(人工知能)の発達が経済にもたらす影響を予測し、対策を提言した本です。
ひとことでいえば「AIが人間の仕事をほとんど奪い、大失業時代がくる。ベーシックインカムを導入すれば、危機は回避できる」という内容です。平易なことばで、IT弱者の老呆け天にも理解できるように書かれています。細部についてはしらず、大まかな流れとしては、AIを軸とした「第4次産業革命」はこの人のいうように進行するんでしょう。

1、2030年には、人口の1割くらいしか働いていない、という予測。
シンギュラリティ(特異点=AIが人間を超える日)は2045年頃という予見より早く、2030年頃には、人間のいまやっている仕事のほとんどはAIが代替しているだろうというのが、著者の予測です。
経理・総務などの事務処理はすべてAIに移行。単純労働もサービス分野もほとんどがロボットで代替可能。一見専門分野とみえる会計士、弁護士、医者…それらはAIがもっとも得意とし、進化が見込まれる分野で、人間の働き手は不要になる。
いま、日本の全人口の約半分6400万人が働いているが、それが経営者プラスアルファの、約1000万人が働けば十分という世界になる。つまり、5400万人は失業するわけです。
あな恐ろしや。
2、では労働者=失業者はどうなる。唯一の解答がベーシックインカム(BI)という提言。
労働時間を短縮(たとえば3分の1に)すれば雇用は守られる、というようにはならない。放っておけば労働者はみな失業する。全世界の富を独占する数%の人間からすれば、失業した人間は「飢えて死ね」ということでしょうね。人口が減った方が、勝者・強者にとっては、より住みよい地球環境が守られる。飢えたものの反乱は、AI兵器による皆殺しという、B級SFのようなディストピア(生き地獄)が思い浮かびます。(これは著者のことばではなく呆け天の妄想)。
しかし、こころ優しい著者は、ベーシックインカム(BI)の導入でディストピア(地獄)は回避できる、BIを導入できればAIの発達は人類にユートピア(理想郷)をもたらす、と語ります。
仮に、所得税25%アップ、月額一人7万円(所帯ではなく、老若男女にかかわらず一人7万円)のBIを導入できれば、社会全体が好循環をはじめる。労働にしばられず、日々の糧を得ることに悩まされず、人間は創造的に生きる時代を迎えるだろう、というわけです。

BIについては、呆け天もおおいに関心があります。生活保護という形ではなく、全国民に最低限の生活ができる金額を保障する。社会民主主義の実験を続けている北欧などで、早く試してみてほしいものです。
呆け天の夢想としては、BIの導入と超時短の結合が望ましい。成人したすべての人間に週15時間程度の仕事があり、人間らしく生きられる保障(BI)と報酬がある社会。もちろん、そうなればなったで、それはユートピアではなかったということが明らかとなり…というように、人類史は続いていくでしょう。

わたしが本書で唯一不満に感じたのは、金融取引税(トービン税)について触れられていないことです。なんでもいまや国際的な金融取引は、AI対AIで行われ、人間はその結果を見ているだけという。もはやマネー経済が世界経済を支配している、しっぽが世界をふりまわしている。
これへの有効な課税と再分配が行われていないことが、超格差社会の根本でしょう。なぜか著者がこの問題をスルーしているのが解せませんでした。

わずか13年後のはなしだというのが、こわい

それにしても、2030年といったらわずか13年後です。呆け天だって、まだ生きている可能性がある。
AIが人間の仕事のほとんどを代替している局面がそんなに早く来るとは、にわかには信じがたい。しかし、アルファ碁のディープラーニング(深層学習)の威力とスピードを見せつけられた囲碁愛好家としては、「ほんとにそうなるかも」という気もします。
見たいような、見たくないような近未来です。
ベーシックインカム導入の議論や実施には、時間がたりなすぎる気もする。願わくば、人類史がディストピアを回避し、ユートピアに向かいますように。

若い学者の、自由な問題提起に、乾杯。
人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊 (文春新書) -
井上智洋『人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊』文春新書、2017年、800円+税。
関連:2017年06月21日、1局3秒、1日3万局の自己対戦http://boketen.seesaa.net/article/451061984.html
posted by 三鷹天狗 at 08:08| Comment(2) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ローマ帝国の小麦支給がBIの最初かも知れない気がするけど、そこからの政治的進歩の無さに自戒も含めて忸怩たる思いに・・・
Posted by 山田孝司 at 2017年07月18日 17:01
コメントありがとうございます。「ローマ帝国の小麦支給」までさかのぼる必要はないのでは…。私などはやはり「社会主義計画経済」の失敗(=ソ連の崩壊)と、BIとの対比が気になります。市場経済とBI+民主制がうまく機能し、飢えのない、しかも自由に満ちた社会を創るなんてことが、ホントにできたらすごいことですが。
Posted by 呆け天 at 2017年07月20日 08:43
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