2016年07月08日

菅野完『日本会議の研究』

安倍内閣19名中、16名が日本会議の所属議員。静かに深く進んだ日本乗っ取り。

「日本会議」という、陳腐な右翼集団が日本の政治中枢を占拠している。
安倍内閣の閣僚19名のうち16名(84%)が日本会議所属議員、現職国会議員の4割289人が「日本会議」に所属する。
日本青年協議会という、成長の家政治部を母体とする組織が、いまも脈々と生きていて「現憲法を廃し、明治憲法を復活せよ」という時代錯誤のきわみの主張の実現を、半世紀にわたって、おおまじめに追及してきた。
日本会議は、その日本青年協議会がつくりあげた組織だ。
これが、本書の明らかにしていることです。

出版した扶桑社には、「日本会議事務総長椛島(かばしま)有三」名義で「直ちに出版の差し止めを求める」旨の「申し入れ書」が送られてきたそうです。よほど嫌なことが書かれているのです。自分に不都合な主張はだまらせるという言論弾圧感覚、おもいあがったこの集団の姿がみえます。

私には、次の二つのことがきわめて印象的でした。
1、淵源は、民族派学生運動の長崎大グループ。
日本会議をうみだしたのは、日本青年協議会という「成長の家政治部」を母体とする右翼組織。
その中心を担ってきたのは、安藤巌という成長の家信者だ。安藤は1960年代後半の左翼学生運動高揚期に、長崎大学の民族派学生運動リーダーとして、全国で唯一新左翼・全共闘系運動に勝った。椛島有三はそのとき以来の安藤の子分だ。いまも日本青年協議会や日本会議の運動方針の根本は、この時代からの活動家たちが決めている…。
いやはや。げに恐ろしき妄念じゃのう、という落語の怪談噺の決まり文句が浮かんできます。
かれらが、1970年代の元号法制化運動の成功から今日まで、署名・請願運動、地方議会決議などの「民主的な大衆運動」の手法で、民主主義の息の根を止める闘いを繰り広げてきた。菅野によるその過程の精密な描写には、鬼気迫るものがあります。
「成長の家」自身は、現在の教祖が「エコロジー左翼」のような考えの人であり、日本青年協議会や日本会議中枢の考えかたを全面否定し、声明まで出している。
http://lite-ra.com/2016/06/post-2325.html
「私たちは今回、わが国の総理大臣が、本教団の元信者の誤った政治理念と時代認識に強く影響されていることを知り、彼らを説得できなかった責任を感じるとともに、日本を再び間違った道へ進ませないために、安倍政権の政治姿勢に対して明確に「反対」の意思を表明します。」
これもまたすごい声明です。このブレーキがどれくらい効くのかはわかりませんが、宗教界に届いてほしいものです。

2、改憲は「緊急事態条項」の追加から始まる
日本会議は、当面現行憲法を、次の順番で変えると主張しています。
@緊急事態条項の追加
非常事態に際し、「三権分立」「基本的人権」等の原則を一時無効化し、内閣総理大臣に一種の独裁権限を与える。
これは、民主的な選挙で多数派になったナチスが、ヒトラーに憲法を超える権限を与えて一気に独裁体制をしいた「授権法」と同じことです。麻生太郎が「ナチスのようにいつのまにか憲法を変える方法もある」とうそぶいた、その決め手になるのが「緊急事態条項の追加」です。
A家族保護条項の追加
憲法13条の「すべての国民は、個人として尊重される」と、憲法24条の「個人の尊厳」の文言を削除し、新たに「家族保護条項」を追加する。
呆け天など、日本国憲法の精髄は第13条「個人の尊重」にあると信じる者です。彼らは、あやまたず、核心に切り込んできています。
B自衛隊の国軍化
憲法9条2項を見直し、明確に戦力の保持を認める。
つまり、全条文をまるごと変えるのではなく、この3点を変えれば戦前回帰への回路はおのずと開かれるという作戦です。おそろしい悪知恵です。

日本会議がうちだしているこの内容がそのまま自民党の方針になり、現政権の改憲スケジュールになっている。
参院選の結果次第では、一気呵成にこの作戦が現実のものになる可能性があります。ほんとに恐ろしい。

一ジャーナリストが放った警世の書。みごとです。

一読、かつての立花隆『田中角栄研究』に匹敵する仕事と感じました。
一人のジャーナリストが、公表されている資料を徹底的に渉猟し、執念のインタビューをおこない、相手がもっとも触れられたくないことを白日の下にさらす。
菅野完(すがのたもつ)という人の本を読むのはこれが初めてですが、そのジャーナリスト魂に敬服します。
『田中角栄研究』が田中角栄の失脚をひきおこしたように『日本会議の研究』が安倍政治の失速・墜落のひきがねとなることを祈ります。

一匹狼のジャーナリストが放った渾身の一打に、乾杯。
日本会議の研究 (扶桑社新書) -
菅野完『日本会議の研究』扶桑社新書、2016年、800円+税
posted by 三鷹天狗 at 06:28| Comment(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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