2017年05月18日

春風亭一之輔・古今亭文菊二人会 5/14三鷹芸術文化センター

一之輔初体験。なるほど、一世代若い人たちの落語です。

世評のたかい春風亭一之輔、初体験です。
客席は、われわれの年代もたくさんいるが、30〜40代の、しかも女性客がかなり多い感じです。
開口一番(春風亭きいち)に続いて登場。
なんと「ああ、くたびれたなあ」という雰囲気の出です。マクラのでだしも「忙しすぎて疲れてます」感から入ってくる。なにしろ年間900席演じるという、超のつく売れっ子落語家、客席のほうもなじみの客が多い雰囲気。むかし小朝が「信者のみなさんようこそ」と入って笑わせたが、なにかそれに似た雰囲気が客席との間でかもしだされています。ふーむ。

マクラは「今日が誕生日なんです(笑いと拍手)」「いえ、私じゃなくて森元さんの(笑い)」「初めておみえになったかたには何のことやらでしょうが」とはじまる。
「森元さん」というのは三鷹芸術文化センターの名物企画者森元隆樹さんのこと。三鷹の落語会が、かくも充実して楽しいのはこの人の功労による。他の演者もよく彼の「開演前ご注意」をマクラにふります。この「二人会」も5年前にふたりが真打になったとほぼ同時に始まっており、売れ筋をはずさない森元さんの慧眼が光ります。
こどもが通っている小学校から落語会を頼まれた。まだ大学をでて2〜3年の若い女性教師から「一之輔さんは新進気鋭の落語家さんで」ってお前からいわれたくねえよッ、というあたりでもう会場はどっと沸きます。笑いをひきおこすスピードが早い。子どもたちは素直に笑ってくれているが自分の子どもだけは笑っていない。「受けてるかなあ、恥かかない程度に」という目で左右の雰囲気をみている…このマクラなら初天神か真田小僧、生意気なこどもが出てくるネタかな、とおもっていたら違いました。
美人のカミさんをもらうと早死にするという『短命』です。
『短命』は出入りの職人八五郎のボケで笑いをとる噺ですが、一之輔の場合、隠居のツッコミで笑いをとる。ものわかりが悪すぎる八五郎に「帰れッ!」とキレる隠居に笑いがくる。なるほど、笑いのリズムやポイントが他の落語家と違う。
とちゅう、わたしには聞きとれない固有名詞に客席のなかの若い層が笑う場面があり、なるほど、たぶん「団塊ジュニア」(30代後半40代前半)世代にうける言葉・情報・センスが、この人の落語の核になってるんでしょうね。マクラでトランプのことを「地球規模のジャイアン」といったらどっと受けたのも、ドラえもんが身体にしみついている世代向けです。
まさに「世代交代の旗手」、一世代若い人たちの落語家なんだなと了解しました。

相方の古今亭文菊は、2015年8月1日の悠遠忌で「吉村昭と学習院大学」という企画があり、学習院出身の落語家として登壇しました。そのときは『井戸の茶碗』をキレイに演じて、好印象でした。
独特の、踊るような、オネエ歩きが入っているような登壇で、クスクス笑いが起きています。「剛」の一之輔に「柔」の文菊という、対照の妙をねらった二人会というのが、出の姿からもうかがえます。
演じたのは『心眼』。極端に笑いの少ない人情話でした。
仲入りのあと再登壇した文菊が「さっきは変な噺をおきかせしてごめんなさい。日曜日の昼からやるような噺じゃなかったですね。客席の後ろ半分が寝ているんで焦りました。」とはじめて客席は大笑い。
『湯屋番』の、能天気な若旦那という、姿形からして文菊にいちばんぴったりの噺で大いにわかせました。
トリは一之輔の『五人廻し』。ふられて荒れる客たちを演じ分け、最後は相撲取りをだして「まわしの勝負なら、花魁にはかなわない」とさげる。もてない男の噺が好きなんだなあ。そういえば『一之輔、高座に粗忽の釘をうつ』(白夜書房、2012年)で、「部室落語」ということば使ってます。モテない野郎ばっかりが集まってぐしゃぐしゃとじゃれあってるような落語という意味で、男子校のむさい部活と落語をくっつけたようなことば。考えてみれば江戸は男ばっかし多くて、女日照りのようなところだったといいますから、あんがい、ことの本質をついてるのかもしれません。

軟弱文系サークルっぽい文菊。汗くさい体育会系部活っぽい一之輔。たしかに対照的、たいへん結構な二人会でした。

    演目
一目あがり きいち
短命    一之輔
心眼     文菊
   仲入り
湯屋番    文菊
五人廻し  一之輔

「プロフェッショナル 仕事の流儀」(NHK、4月10日)でも取材対象に

チケットは2月に入手してあります。座席が250なので、油断するとすぐ売り切れる。
そしたら、4月10日のNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」に一之輔が登場したので驚きました。落語家でこの番組にとりあげられるのは二人目だそうです。一人目はかの人間国宝・柳家小三治です(2008年10月14日。リアルタイムで見ました)。その次が一之輔か。ふーむ。
放送のなかの一之輔は、こどもとじゃれあう、ゴミ捨てする、よく倒れないなと感心するほどのハードスケジュールの中で新作を創る、原稿を書く。カメラに向かって愛想よくふるまう場面はいっさいなし。こわもて、無愛想。最後に「これ、ギャラ出るんですか」というセリフをかまして終わる。
前に「酒とつまみと男と女」(2014〜15年。BSジャパン火曜21:00〜)という番組があり、「不良隠居」こと坂崎重盛の相手役「聞き上手」の落語家で一之輔がでていた。この時の一之輔は、老人・坂崎にどんな話でもあわせる柔らかい表情を見せていた。
「プロフェッショナル 仕事の流儀」での一之輔は、それとはぜんぜん違っていました。
実に興味深い。どんな噺家になっていくんだろう。

世代交代の旗手。マクロンの同級生(マクラのセリフから)一之輔に、乾杯。
一の輔2.jpg 一の輔.jpg
春風亭一之輔・古今亭文菊二人会 5月14日(日)14:00〜 三鷹芸術文化センター星のホール
関連:2015年08月02日、第七回悠遠忌 吉村昭と学習院大学http://boketen.seesaa.net/article/423439066.html
2014年06月04日、坂崎重盛『東京煮込み横丁評判記』http://boketen.seesaa.net/article/398659398.html
posted by 三鷹天狗 at 07:59| Comment(0) | 落語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする