2017年05月31日

町田で、横尾忠則展と木村巴個展をみる

横尾忠則展、撮影自由という解放感あふれる展示、さすがです。

5月9日、町田市民文学館で開かれた「本の雑誌厄よけ展」を見に行った日に、少し足を伸ばして町田市立国際版画美術館を見学しました。
これが思いもかけないほどすばらしかった。
まず横尾忠則の作品展。われわれ世代にはなんとも懐かしい。毒々しい色彩の、見せ物小屋のいかがわしさが匂うようなポスター。50年前、映画・演劇のアンダーグラウンドなエネルギーを解き放つかのようにきらめいていた。シルクスクリーンなど、あらゆる技法で表現された数百点の作品が並んでいる。
そしてなんと、自由に写真撮影していいというのだ。フラッシュはだめ、シャッター音が他の客の迷惑にならないように、ということだけ配慮して、あとは自由。さすが横尾忠則、精神の自由さが違うなあ。いまや国際的な芸術家と評価されているのにぜんぜん偉ぶらない姿勢に敬服します。
美術展で撮影自由というのは、ここ数十年記憶にない。アマチュアの作品展ですら撮影禁止だったりする。過剰な著作権意識が「見せてやる」感ただよう展覧会になる。ばっかじゃなかろか。見に来ていただいてありがとうございます、人の目に触れてこその「表現」です、という「見せ物」の原点がこの横尾忠則展にはあります。
横尾忠則エライッ!町田市立国際版画美術館、立派!
過剰な「撮影禁止」の風潮に、風穴をあけるすばらしい展覧会です。
横尾4.jpg  横尾2.jpg

たまたまやっていた木村巴個展。これがおどろくほどすばらしかった。

たっぷりと横尾ワールドにひたって一階におりると、「市民展示室」というコーナーで、木村巴というたぶん町田在住と思われる画家の個展をやっています。ま、ついでにと思って入ったら、これがなんと、3・11東日本大震災をテーマにした、どこでも見たことのない、すばらしい作品群です。わたしが知らないだけで、きっと知る人ぞ知るといったプロの画家なんでしょう。
見学のおばさんたちが絵と一緒に記念撮影しているゆるーい雰囲気なので、受付に聞いたら、こちらも撮影は自由です。すばらしい。私の携帯の写真ではとても伝えきれないのですが、大震災の津波のまがまがしい情景と、未来に向かう少女のすがすがしい表情が一枚の絵におさめられている。絶望と、希望が、一枚の絵に凝縮されている。あの大震災を正面から見据えた、こんなにもすばらしい絵があったのか。感動しました。
木村巴MG_20170509_130130_.jpg 木村巴IMG_20170509_130246_.jpg
さらに奥には「憤怒」と題された連作4点。これは第29回全国絵画公募展IZUBI(伊豆美)で、大賞を受賞した作品という。
奇妙な作品です。テーブルにがっと手をついた爺さんが、全身から怒りのオーラを発している。新聞の切り抜きの見出しは、原発やら、安保法制やら、沖縄やら、安倍ブラック政権が狂奔する悪政に関するもののようだ。
憤怒.jpg 木村憤怒.jpg 
わたしにはこの絵の解説はできない。つい最近、雁屋哲(『美味しんぼ』原作者)のブログに、微に入り細にわたった、この作品の鑑賞がのっています。すばらしい内容なので、のぞいてみることおすすめします。「雁屋哲の今日もまた」 http://kariyatetsu.com/blog/1912.php

やるなあ町田市。多摩地区の、もう一つの中心になってもおかしくない。

市民文学館という建物も珍しいと思いますが、市立の版画美術館というのも、他に例がないのでは。とんがってるなあ。町田は、神奈川のような東京なような、微妙な場所にあります。立川や八王子という中央線メインストリームの町とは違った個性を主張したいという、独自の欲求を感じました。
こんな大胆な文化発信力があるなら、多摩地区の、もう一つの中心になってもぜんぜんおかしくない。ここに大きな吸引力をもった空間が成立することは、東京にとって明らかにいいことと感じます。

町田市立国際版画美術館の、解放感にあふれる展示、太っ腹な運営に、乾杯。
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横尾忠則 HANGA JUNGLE 2017年4月22日〜6月18日、町田市立国際版画美術館。http://hanga-museum.jp/exhibition/schedule/2017-333
木村巴第4回個展 2017年5月9日〜14日、町田市立国際版画美術館市民展示室。 
posted by 三鷹天狗 at 08:42| Comment(0) | 美術・水彩画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年05月29日

岡崎慎司『鈍足バンザイ!僕は足が遅かったからこそ今がある。』

鈍足でも、ネガティブでも、トップアスリートになれる。

岡崎慎司といえば、日本代表のベテランFW。キャップ数(日本代表試合数)108、50得点(2017年5月現在)という、歴代3位の記録をもつ、れっきとしたエースです。記録はさらに伸びるでしょうから、55得点のカズこと三浦和良を抜いて、歴代2位になる可能性もある。
その岡崎が自分のことを、足が遅い、ドリブルがヘタ、視野が狭い、モテない、人気がない、いじられキャラ、ネガティブ思考…、トップアスリートとは思えない人間であると、率直に語っている本です。

高校を卒業して清水エスパルスに入団した岡崎は、フィジカルコーチ杉本の指導で、大学陸上部の女子選手と坂道を並走し、何本走っても一度も勝てなかった。それ以降、今でも杉本から走りかたを指導してもらっており、着実に成長しているのだが、ドイツに移籍してチーム内の短距離走の順番を測ったら2番目に遅いタイムだった。
つまり現役バリバリの鈍足FWというわけです。
ここから先が、通常のスポーツ成功ものがたりと少し違う。ふつうここからは、短所を嘆くのではなく、長所をのばせというオハナシにいくわけです。足が遅くとも、相手守備陣とのかけひき、裏に抜け出すスピードといった、自分の長所を伸ばせばいいんだ、少年たちよ!
ところが岡崎は、いま現在にいたるまで、自分の「鈍足」という短所の克服にとりくみ続けている。杉本の指導をうけ、ムダのない走り、トップスピードへの瞬時の移行といった、自分のいちばんの課題に挑戦し続けている。その執拗さがすごい。決して手をぬかず、科学的・合理的なトレーニングで一秒でも早く走れるようになるための努力をおしまない。
「足が遅くて良かったなあと僕はいつも思っている。足が遅いという強烈なコンプレックスがあったからこそ、今の僕があると確信しているからだ。足の速さではチームメイトに負けるから、たくさんのゴールを決めるにはどうすれば良いのかを常に考えてきた。足が遅いから、(杉本)龍男さんの提供してくれるトレーニングに全力で取り組むことで少しづつ早くなる喜びを実感できた。」
じぶんの短所にとことんむきあうという、いまどきあまり流行らない、しかし強烈な説得力をもつ考え方と実践です。

ネガティブ思考。
「怖い。試合が始まるのが怖い。プレッシャーを楽しむなんてもってのほかだ。」
「結局、僕はものすごく臆病なのだ。だから、最悪の事態を想像して気持ちをなえさせておく。つまり自分へのハードルを下げておく。そこまでして、なんとか試合に臨む。自分が臆病だとわかっているからこそ、謙虚に戦える。」
まるで「臆病剣松風」の瓜生新兵衛です(藤沢周平『隠し剣孤影抄』)。
ポジティブであることこそ一流アスリートの条件とされています。勝利のイメージ、成功のイメージを抱いて試合にのぞみ、実際にそれをひきおこす…そういう話ばかりが語られる。
しかし岡崎は「サッカーなんだから負けることもある」としか考えられない。この試合を負けたら、その次の試合どうするかということを考えてしまう。だから、勝ってもあまり舞い上がらないし、負けてもあまりおちこまない。ひとにすすめられても、流行りの「メンタルトレーニング」は、やらない。
鈍足でネガティブですが、それでなにか問題でも?という、逆張りの発想が冴えています、

一流アスリートの本は、際立ってこそ、おもしろい。

一流のアスリートの書いた本としては、落合博満の名著『采配』にならぶくらい面白いと感じました。
三冠王3回、監督をやればリーグ優勝あたりまえという、超がつく一流の落合は、「オレ流」を貫いて結果をだしてしまう。コーチのいいなりになるな、彼らの言うとおりにやって成績がおちても、だれもお前の生活の面倒などみないぞという、ミもフタもない「真実」が語られます。天馬空を行くような落合の言動は、凡人にとっては手が届かない、想像の及ばない境地をのぞく面白さに満ちています。
岡崎は、なんとか清水エスパルスに入れてはもらったが、「なんでそんなこともできないんだ」「下手くそ」という先輩の怒声におびえながら練習し、いじられキャラ・へらへらキャラで居場所を確保してきた。今でも、監督、コーチ、先輩たちが語ってくれたこんな大切なことばがあると、たからもののように語ります。
2012年に国際試合から帰って成田空港に着いたとき、香川真司のとなりにいた岡崎は、香川ファンの女性に「おとなりは…お友だちの方ですか」といわれてしまったエピソードを書いている。フツー人とみられてしまったのだ。いやはや。落合とは逆の意味で際立っています。

われらが鈍足フォワード、フツー人岡崎慎司に、乾杯。
鈍足バンザイ!  僕は足が遅かったからこそ、今がある。 -
岡崎慎司『鈍足バンザイ!僕は足が遅かったからこそ今がある。』幻冬舎、2014年、1300円+税。
関連:2015年07月03日、なでしこジャパン決勝進出。強い!http://boketen.seesaa.net/article/421700709.html
posted by 三鷹天狗 at 11:47| Comment(0) | スポーツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年05月27日

「共謀罪」が衆議院を通過

「戦争は国会から始まる」ということばが、どんどん現実味をおびる

5月23日、「共謀罪=現代の治安維持法」が衆議院を通過した。
もはや日本の政治は、安倍ブラック政権の暴走を止めるどんな手立てもない様相を呈している。
世論調査によれば、共謀罪の審議は不充分だと思うなど、個々の政策には疑念を抱いている国民が多い。しかし、安倍政権へのい支持率は変わらない。
「戦争は国会から始まる」という、老国会ウオッチャーのことばが、どんどん現実味を帯びてきている。(朝日新聞2015年9月18日、西川重則さん(88))
有識者のなかには「安倍政権がみずから有事を引き起こす」危険を指摘する声も出てきている(菅野完『日本会議をめぐる四つの対話』での白井聡の発言)。
そうなった時、「がらりと風景が変わるように」国民が戦争に熱狂していく姿を、飯田進や瀬戸内寂聴の世代は見てきた。

5月24日朝日新聞社会面に「権力に反発する人間に反発する人」が増えているという小田嶋隆のことばが載っている。
小田嶋が「一般人は対象にならない」という政府の説明に対して「これってつまり『誰が一般人でどんな人間が犯罪予備軍であるのかはオレらが決めるんでよろしく』ということだよね?」とツイッターで発信した。すると「適当に批判するのは小学生レベル」「『テロ等準備罪』の文字が読めないの?なんですぐに妄想で語っちゃうの」といったツイートが相次いだのだという。
菅野完は、日本会議の特徴は「アンチ・言挙げする人間」であり、「理屈を言う奴が嫌い、筋道立ったことを言う奴が嫌い」という「日本のおっさん会議」だといっている(同前)。
小田嶋へのツイートには、その気分がよく出ている。薄気味わるい。それこそ「時代は治安維持法」とでもいうべき気分が、年代を問わず蔓延しはじめていると感じる。

「歴史は繰り返す。一度目は悲劇、二度目は喜劇として」という。
安倍や日本会議の妄動が「喜劇的な破綻」をむかえることを、多摩の片隅から念ずるしかない。
共謀罪3.jpg共謀罪2.jpg  共謀罪.jpg
関連:2015年09月19日、戦争は国会から始まるhttp://boketen.seesaa.net/article/426334101.html
2015年09月11日、五木寛之・古市憲寿対談http://boketen.seesaa.net/article/425705043.html
posted by 三鷹天狗 at 09:12| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする