2016年06月30日

月下美人は、寝不足を招くの巻

囲碁仲間の長老から月下美人を一鉢いただいた。高さは2メートル近い。
「つぼみの具合からして今日明日には開くだろう」ということで待ちかまえましたが、一日目開かず。
二日目、もう開いてもおかしくないと思うが開かず、寝ている間に開かれたんじゃなんのこっちゃということになるから、午前1時過ぎまで待っても開かない。美人は寝不足をもたらします。まるで落語の『短命』です。
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三日目、夕方にゆっくりと開花がはじまりました。
まさに超スローモーション映像を見る感じ。
左から、午後7時、8時、9時。
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そして10時満開。光かがやくように美しい。
月下美人20160628215927.jpg
なぜか、芳香はあまり強くなく、花の神秘的な白さが輝く一夜となりました。
次の日の朝、目覚めるとすっかり羽をたたんでいます。
まさに一夜の夢。
月下美人20160629065523.jpg
古来より神秘的な美しさで人を魅了してきた月下美人に、乾杯。
posted by 三鷹天狗 at 20:49| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年06月28日

村上稔『買い物難民を救え!ー移動スーパーとくし丸の挑戦』

ソーシャルビジネスで「ハッピーになってやろう」という挑戦

著者は、勝利した住民運動として全国的にも有名になった「吉野川可動堰」住民投票運動の立役者です。
徳島市議会議員を三期つとめたあと県会議員に挑戦するも、あえなく落選。
無職となり、ハローワークで仕事探しをするがなかなか見つからない。
それじゃ自分でなんかビジネスを立ち上げようとはじめたのが「買い物難民を救え」というソーシャルビジネスです。
田舎の高齢者が買い物難民化している。これを、地域土着のスーパーと提携して「移動スーパー」で救っていく。さらに、その動きを「ネットワーク」化し、本部機能をもったビジネスとして成立させる。すばらしいアイデアですね。
世のため人のため、この身を犠牲にして、というのは必ずだめになる。ソーシャルビジネスで「自分もハッピーになってやろう」という挑戦なんだという。

住民運動で実績をあげたひとですから、社会的貢献とビジネスが結びついた「ソーシャルビジネス」という発想はごく自然です。
しかし、得てして運動家は金もうけが苦手。泥くさく、粘り強く、ときには厚かましくという商売の基本は、一緒に事業をたちあげた社長住友達也の経験や知恵がものをいったようです。
村上は自分のことを「根性なし」で「おっとり型」、マイペースの平和人間と称しています。謙遜含みでしょうが、ま、社会運動家にはありがちな性格でしょう。

2012年1月に、2台の軽トラックでトコトコと自分の家の周辺をまわることから始めたビジネスが、本の出版時点では、徳島県内で10台、京都、高知、広島、福島とネットワークが広がっている。ネットで見ると今では27都府県140台にまで発展しているようです。すばらしい!http://www.tokushimaru.jp/

それにしても買い物難民なんていう言葉、40年前には想像もつかなかったなあ。なんかTVで「大店法」云々という討論番組をやっていたという記憶があります。
その後自由化されたスーパーの出店は、すさまじい地域経済の破壊をもたらした。田舎町にできる大型スーパーにすべての客が吸い寄せられ、小さな地域商店は全滅する。シャッター通りと化した商店街の風景は、小さな旅にでればどこにもあります。
地域が破壊され、消費・購買力が落ちると、スーパーはあっさり撤退する。残された町は「フードデザート(食の砂漠)」とよばれるようになる。
まったく許しがたい「破壊のための出店」が、いまも日本全国でくり広げられ、食の砂漠化はこれからますます広がっていく…。

しかし、その状態は、移動スーパーとくし丸にとっては、新たな商圏の誕生であるわけです。究極の逆転の発想ですね。
とくし丸は、対面型販売、会話のある販売を通じて、食料品だけではなく、新たなさまざまなサービスを提供しはじめているという。
血で血を洗う競争的な商売のことを「レッドオーシャン(血の海)」といい、とくし丸のようなビジネスモデルを「ブルーオーシャン(青い海)」というのだという。いまだ競争のない、未開のフロンティアをさしてそういうらしい。村上は、少し意味をかえてブルー=憂えるとし、買い物すらできないという「憂える海」に漕ぎだす新ビジネスと位置付けます。一人勝ちしない、大儲けしない、しかし確実に事業が継続できる程度の利益はだす、というビジネス像です。とてもいいなあ。

こういうところから世の中が変わっていってほしい

村上のことは國分一太郎『民主主義を直感するために』で知りました。2013年8月の國分と村上の対談「変革の可能性としての市民政治」が収録されており、「吉野川可動堰」の住民投票運動がいきいきと語られています。
村上の発言には、現場できたえ抜かれた強さ、明るさがあります。そこで、現在はソーシャルビジネスにとりくんでいるとの発言があり、本書を知りました。
県議選に落選して無職になったときの、落ち込みや心の葛藤なども、すごくよく伝わってきます。
こういう人の実践こそ、世の中をじわりと良くするものだと感じます。

移動スーパーとくし丸の健闘を讃えて、乾杯!
買い物難民を救え―移動スーパーとくし丸の挑戦 -
村上稔『買い物難民を救え!ー移動スーパーとくし丸の挑戦』緑風出版、2014年、1800円+税。
関連:2016年06月19日、國分功一郎『民主主義を直感するために』http://boketen.seesaa.net/article/439128234.html
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posted by 三鷹天狗 at 10:33| Comment(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年06月26日

イギリスのEU離脱にも驚いたが、トッドの予言的中にも驚いた。

次はハンガリーが離脱。焦点は「併合途上」のウクライナのゆくえ。

イギリスのEU離脱が世界を驚かせている。呆け天もひとなみに驚きました。
EU離脱.jpg

離脱にも驚きましたがもうひとつ、去年読んだエマニュエル・トッド『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』(文春新書)がしっかりこのことを予言していたことにも驚きました。
2014年8月に行われたインタビュー「ドイツがヨーロッパ大陸を牛耳る」でトッドはこう語っています。
「彼ら(イギリス)は…ドイツ人に従う習慣を持っていない。」
「貿易上は格別に重要であるが、メンタル的にはどうしても和解できないタイプのヨーロッパ(=ドイツ主導のEU)を前にして、イギリス人であることはどれほど居心地の悪いものであるか。」
ーいつか彼らはEUから去ると思いますか?
「もちろん!イギリス人はより強いわけでも、より優れているわけでもない。けれども彼らは背後にアメリカ合衆国を持っている。」
つまり、イギリス人はそのメンタリティからしてドイツ主導の連合には同席できない、アメリカやカナダなどと一緒にやっていくという道をかならず選ぶと、断言しています。
今回その通りになった。
そうか、「イギリス人のメンタリティ」は経済的得失を超えるのか、「戦争のない欧州」といった「理念」を超えるのか。
トッドは「自由主義的デモクラシーとその諸価値」などというイデオロギーは「赤子のおもちゃ」だと言いきっています。そんなものを振り回して、ロシアを敵視したり、ヨーロッパの一元的統合(という名のドイツ一元支配)を説いたりすることをいますぐやめろ。フランスは、ユーロ(EU共通通貨)からの離脱をすぐに宣言しろ、と言い募っています。

トッドは、この本『「ドイツ帝国」が…』で、ドイツはもはやアメリカ帝国に対抗する帝国を築いたと語っています。
ドイツ帝国.jpg
ドイツが盟主(黒)。属国がチェコ、クロアチア、スロベニア、ベルギー、オランダ、スイス(濃いグレー)。自主的隷属国がフランス(薄いグレー)。これがトッドのいう新しいドイツ帝国の中枢部です。これに、事実上の被支配地域としてイタリア、スペイン、ポルトガルギリシャなどの南欧諸国が内心の鬱屈を隠して服従している(オレンジ)。ロシア嫌いが骨身に沁みているポーランド、スウェーデンなどが衛星国(赤)。
イギリスがこの帝国に止まることは生理的に不可能だし、続いてハンガリーが離脱すると予言しています(グリーン)。ハンガリーの場合、誇り高くソ連と闘った過去を持っているので(ハンガリー動乱)、他の東欧諸国のようなソ連恐怖症がないという。

また、ひときわ力を入れて論じているのが「併合途上」としてのウクライナ(茶色)についてです。
ドイツはウクライナの極右・ファシスト勢力を使ってウクライナを併合しつつある、これは実質上のロシアへの宣戦布告だ。再び欧州が戦火にさらされる危険を防いでいるのはプーチンの忍耐強さ、プロファッショナルな政治的力量ゆえだ。これは、プーチン嫌いのヨーロッパ知識人には決してうけいれることのできないことばです。

トッドは「ドイツ帝国」が築かれるより、アメリカ帝国のほうがずーっとマシだ、といいます。
ナチズムを制圧するにはアメリカとロシア(旧ソ連)の力が必要だった。いま問われているのはドイツによる(ファッショ的な)欧州金融支配を誰が制御できるかだ、と問題をたてています。

「ユーロ全体主義」を倒せというトッドの主張

トッドは現在のEUの「ユーロ死守」の姿勢は、ナチズムや「自称社会主義」の全体主義となんら変わらない精神病理だと罵倒します。全体主義は若さがまだリソースであり続けた社会に依拠していたが、「高齢化の今日、われわれはそれの耄碌バージョンを産み出している」といいます。そうか、悪口というのはこういうふうに言うのか。「全体主義の耄碌バージョン」には笑うしかありません。
トッドは別に「EUの破壊」を求めてはいません。統一通貨ユーロの廃止を求めているだけです。
EUの文化的な側面を高く評価し、経済統合・政治統合(それは必ずドイツの一人勝ちに帰着するという予見が可笑しい)をあまり追及するな、各国・各民族の独自性を尊重せよと言っています。そして、そのカギを握っているのが、フランスだ。ドイツの手先になっている愚かしい現指導部(オランド政権)を退陣させ、フランスの存在意義を示す指導部が必要と説きます。

イギリスのEU離脱のニュースをみながら、もういちどトッドの言説に耳をかたむける、また楽しからずや。

関連:2015年05月29日、エマニュエル・トッド『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』http://boketen.seesaa.net/article/419767550.html
posted by 三鷹天狗 at 10:52| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする